インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

禁じられた不倫のゆくえ/映画『Silsila』【アミターブ・バッチャン特集 その7】

■Silsila (監督:ヤシュ・チョープラー 1981年インド映画)


死んだ兄の許嫁に同情し、恋人と別れてその許嫁と結婚した男アミットが、別れた恋人への未練が絶ちきれず、既に結婚してしまった元恋人と不倫に走ってしまう、というアミターブ・バッチャン主演のメロドラマです。

ヒロインの配役が凄くて、まずアミットが結婚した女性・ショーバーにアミターブ・バッチャンの実際の嫁ジャヤ・バッチャンを、そして不倫をしてしまう元恋人・チャンドニーを、アミターブが当時実際に不倫していたという噂のレーカーがやってるんですね。なんかもー自分のスキャンダルをそのまま映画にしちゃいました〜というとっても生臭い配役なんですよ。

ただまあそういった作品内容以外のことは忘れてきちんと観てみると、これが意外とよく出来た作品なんです。死んだ兄の言った「自分の許嫁の面倒を見てやってくれ」といった言葉を恋人と別れてまで実行した主人公は非常に肉親想いで義理堅い男だということができるし、にも関わらずやっぱり元恋人に後ろ髪引かれるというのも、いいか悪いかは別としてとても人間臭い感情だと思います。まあ結局主人公の優柔不断さが全部悪いんだけどな!

そして悪いことはできないもの、二人の嘘は次第にほころんでゆき、周囲の人たちは段々とこの二人なんかおかしい、と気づいてゆくんですよ。この、秘密が徐々にバレてゆく、という描写が、完全犯罪が徐々に破綻してゆく様を描いた犯罪ドラマみたいで妙にスリリングなんですよ!こういう観方をする映画じゃないとは思うんですが!

そしてこの映画の見所はもう一つ、こういった俗っぽいメロドラマを、格調高く端正な描写で美しい物語に仕立て上げたヤシュ・チョープラー監督のただならぬ力量でしょう。映像も実に美しく、時々ヨーロッパ映画を観ているような錯覚さえ起こしてしまうぐらいです。ヤシュ・チョープラー監督作品は『Jab Tak Hai Jaan』(2012)や『Veer-Zaara』(2004)他数作しか観たことがありませんが、1981年作のこの作品の高いクオリティを見るにつけ、なぜ巨匠と呼ばれるのか分かるようになってきました。

それにしても主人公と不倫相手の元恋人、自分の嫁や旦那の目の前でキャッキャウフフ踊ってんじゃねーよ!なんでそう脇が甘いんだよ!だからバレるんだよ!