■Khakee (監督:ラジクマール・サントーシ 2004年インド映画)
容疑者護送の任に就いた警官たちを次々と襲うテロリストの群れ!というとってもド派手なアクション大作です。そして配役も豪華。護送任務のチーフにアミターブ・バッチャン、その部下としてアクシャイ・クマール、彼らを襲うテロリストの親玉がアジャイ・デーヴガン、さらに彼らと絡む美女がアイシュワリア・ラーイといった、マサラ・ムービーならではのスター・システムなんですね。また、護送される容疑者を『Rang De Basanti』で右翼青年を演じたアトゥル・クルカルニーが演じていたことも個人的に注目でした。プラカーシュ・ラージが顔を出していることも悪役ファンには嬉しいですね。タイトル『Khakee』は警官のカーキ色の制服を指しますが、そもそもこのカーキという言葉はインド由来なのだそうですよ。
《物語》定年間近の警察官アナント(アミターブ・バッチャン)はテロリスト容疑者イクバール(アトゥル・クルカルニー)をチャンダルガルからムンバイへと護送する危険な任務に就くことになった。護送チームのメンバーは不良警官シェーカル(アクシャイ・クマール)、新人のアシュヴィン(トゥシャール・カプール)などで結成され、さらに保護された証人マハーラクシュミー(アイシュワリヤー・ラーイ)が同行することとなった。しかしその道程をアングレー(アジャイ・デーヴガン)率いるテロリスト集団が執拗に追い詰め襲撃を繰り返す。しかもその背後では腐敗した警察内部での陰謀も蠢いていた。果たしてアナント一行は無事容疑者を送り届けることができるのか。
いやあ、実に骨太なアクション大作でした。まず冒頭、最初に行われた護送ミッションが描かれますが、ここでは警官隊とテロリストとの熾烈な銃撃戦が炸裂し、警官たちが次々と悲壮な最期を遂げ、物語は初っ端からアクセル全開の派手さを見せてゆくのですよ。この失敗した護送ミッションを受け継ぐのがアナント一行というわけなんですね。アナント一行もやはりテロリストの襲撃を受け、一人また一人と警官たちが命を落としてゆくんです。ようやく逃げ込んだ一軒家の邸宅ではテロリストたちに包囲され、ここでも凄まじい銃撃戦が展開します。その中で警官同士の衝突、容疑者イクバールの悲劇の人生、テロ首謀者アングレーの正体といったドラマが盛り込まれ、物語はいやがうえにも盛り上がってゆくんですね。
容疑者護送とそれを襲撃するテロリストといったプロットは非常にしっかりしており、その中に手を変え品を変えアクションとサスペンスを展開させることで充実した作品内容になっている部分で楽しませる作品ですね。とりわけ銃撃戦の凄まじさは特筆すべきでしょう。刻々と変化する人間関係も面白さと驚きを加味しています。とはいえそこはインド映画、アクシャイ・クマールとアイシュワリヤー・ラーイのお花畑なラブラブ展開を説明する歌と踊りが挿入されたり、殺害された警官を悼むメロドラマ展開があったりと、あれやこれやが盛り込まれ、サスペンス・アクション一辺倒ではない作りになっていて、この辺が緊張感を殺ぐのと同時に、インド映画らしいな、と思わせる内容になっています。
そしてこの作品で注目すべきはやはりアミターブ・バッチャンの安定の名演ぶりでしょう。ちょっと緩めのアクシャイ・クマールや、真面目だけど地味なトゥシャール・カプールの中で、アミターブの存在感が作品の緊張感と迫真性を高めているんですね。アミターブ演じる警官アナントは、ベテラン警官ではあるものの実はたいした功績もないといった苦悩を抱えており、迷いを抱きながら警官たちを指揮してゆく姿に人間性を感じさせるんです。この映画はそんなアミターブが引っ張ってゆくことで成り立った作品ということができるでしょう。一方敵テロリストを演じるアジャイ・デーヴガンは、演出のせいなのでしょうがサングラスや常にタバコを吸う演技や斜に構えたポーズがどうも臭くって、彼の登場シーンで白ける、といった部分で残念でした。