インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

16世紀ムガル帝国に燃え上がる愛〜リティク・ローシャン、アイシュワリヤー・ラーイ主演映画『Jodhaa Akbar』

■Jodhaa Akbar (監督:アーシュトーシュ・ゴーワーリーカル 2008年インド映画)


16世紀のムガル帝国を舞台にした歴史大作です。上映時間はたっぷり3時間20分、主演であるムガル皇帝アクバルをリティク・ローシャン、その結婚相手ジョダーをアイシュワリヤー・ラーイ、ジョダーの兄をソーヌ・スードが演じています。ちなみに同じムガル帝国を描いた1960年製作のインド映画大作『Mughal-e-Azam』(レヴュー) は、皇帝アクバルの晩年を描いたものになっていて、ある意味繋がっているといえば繋がっているんですね。ただしこの『Jodhaa Akbar』は「必ずしも史実に忠実という訳ではない」ことが最初に断られています。

物語はざっくり言うと、皇帝アクバルとアーメール王国の王女ジョダーとの政略結婚の行方を描いたものになっています。政略結婚であるが為に最初ギクシャクしていた二人が、どのように歩み寄っていくか、というのが物語の中心となり、これにジョダーと姑の確執やら、アクバルに反旗を翻すジョダーの兄の一派やらが絡んでくるという訳です。「ジョダーとアクバル」についての物語ですから、ムガル帝国の栄枯盛衰を語ろうとか皇帝の一生を語ろうとかいうことはしていないんですよ。また歴史ものによくある政治をとりまく陰謀術策、さらに戦乱の嵐!戦に次ぐ戦!というものでもあんまりないんですね。もちろん山あり谷ありではあるにせよ、基本的には3時間半使ってなんとなくまったりと、皇帝と嫁の愛の行方を描いているんです。

で、なにしろ長い映画なんで、インド映画お馴染みのインターバルが映画始まって2時間位してからやっと訪れるので鼻血が出そうになります。しかし後半が1時間半だということを思えば「もうちょっと頑張るぞ!」という気にもさせられるというものです。で、長い長い言ってますが、この映画はインターバル挟んでの2部ではなく4部ぐらいに心の中で分割すると整理が付いてきます。まず第1部は「皇帝の誕生と嫁を連れてくるまで」です。そして第2部が「なかなかなびかない嫁と姑の陰謀」です。そしてインターバル挟んで第3部が「やっとお互いを理解しあえてよかったねラブラブだね」です。終章となる第4部は「皇帝だから政治だってちゃんとやるし戦だってやっちゃうよ」です。それそれが50分ぐらいのパートになった4回完結のTVドラマを見たと思えばいいんですよ。

確かにTVドラマサイズな部分があったことは否めません。映画としてドラマ密度が薄いからです。このテーマにしてはお金の掛け方がちょっと足りなかったかなあ、惜しいなあ、という気もしました。まず兵隊やら民衆やらのモブの数が足んないし、殺陣はヘナチョコだし、撮影がどうもお座なりだったし、美術とロケーションは悪くないにしても物足りなかったし、なんとなくNHKの正月時代劇みたいに見えちゃうんですよ。歌と踊りもさらっとしか出てこなくて、その部分で華やかさに欠けてたのかもしれません。音楽はA.R.ラフマーンでしたが、これもそれほど耳に残らなかった。

とはいえ、主演のリティクもアイシュワリヤーも美男美女だし存在感があったし、衣装は綺麗だし、ラブラブ展開もなかなかにロマンチックです。皇帝とジョダーが剣技のお手合わせしながら遠まわしにイチャイチャする場面とかもう最高です。監督早くこれやりたくてしゃーなかったんじゃないかな。二人の愛が遂に成就するシーンではさすがインド映画らしく大いにエモーショナルに盛り上がってくれます。監督多分ドラマなんかどうでもよくて思いっきりエモーショナルの翼を羽ばたかせたかったんだと思います。だって背景や経緯を説明しなければならない前半パートが詰まらなかったんだもの。前半にも後半にも戦のシーンはありますが、後半の戦のシーンのほうに力が入ってたのは、そこに家族やら血縁やらの因縁があったからで、これもまた情緒的に盛り上げやすかったからでしょう。

それと、この物語ではイスラム教を主教とするムガル朝皇帝が、ヒンドゥー教徒であるジョダーを躊躇なく受け入れ妃にするといった部分にももう一つのテーマがあるように思えました。実際にムガル朝は他の宗教に寛容だったということですが、それを描くことで現代におけるムスリムヒンドゥーの融和を訴えかけようともしていたのではないでしょうか。

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