インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

【インド名作映画週間その4】インド映画史に燦然と輝く超弩級の歴史絵巻〜映画『Mughal-e-Azam』

■Mughal-e-Azam (監督:カリームッディーン・アースィフ 1960年インド映画)


ムガル!ムガル!ムガル!映画『Mughal-e-Azam』は16〜19世紀後半までインド亜大陸を支配した偉大なるムガル帝国の、ある一時代を描いた大歴史巨編である。なにしろなにからなにまで凄い映画だったが、まず初っ端からして凄い。なんと空からインド亜大陸が降りてきて「私はインドだー」と語り始めるのである。

ここで腰を抜かしているうちに映像はムガル帝国宮殿の中に入り、赤青緑とありとあらゆる色彩が瞬く宝石と、金に銀に白金にと光り輝くきらびやかな宮廷内部が映し出されるのである。そしてそこに集う者たちはそれら金銀宝石を豪奢にまとう王族たちなのだ。この絢爛豪華な衣装と舞台美術がなにしろ度肝を抜く。この映画は通常映画1本製作する予算のさらに15倍の予算を掛けて作られたというからこのとんでもない舞台美術に掛けられた予算の物凄さも予想がつくだろう。

そしてそこで物語られるのは、ムガル朝第3代皇帝ジャラールッディーン・ムハンマド・アクバルの息子ヌールッディーン・ムハンマド・サリームが、踊り子へ禁じられた恋をしたばかりに巻き起こる、父子の対立とそれが発展したことによる大戦争なのだ。つまりは大帝国の規律と威信をたったひとつの愛と天秤にかけた男の壮大な悲恋の物語なのだが、まあ大げさな親子喧嘩といえないこともない。

とはいえインド映画美術の粋を凝らしたその映像は一見の価値があることには間違いない。それは既に美しさを通り越してサイケデリックですらある。映像上の色彩の奇妙な滲み方などはアバンギャルドであると同時にキッチュにすら感じさせる(後述するがデジタル彩色の為らしい)。このドラッギーともいえる色彩と美術が生み出す酩酊感から、オレはセルゲイ・パラジャーノフソ連映画ざくろの色』やアレハンドロ・ホドロフスキーのカルト映画『ホーリー・マウンテン』を思い出してしまった。

インド映画史に燦然たる歴史を刻み付けた超弩級ともいえるこの作品は、数々の驚くべき伝説を残している。また当初モノクロでリリースされたこの作品は2002年にインド映画初のデジタル着色がなされ公開された。この辺りの内容についてはインド映画といえばこのブログ、『これでインディア』さんの2004年11月分記事におけるここここなどを参考にされたい。

古典ながらこの作品はBlu-rayでの発売があり、その絢爛豪華な映像をパッキパキの画質で視聴することができるので、興味のある方は探してみるといい。

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