インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

夢なのか現実なのか?映画『ルシア』

ルシア[原題:Lucia] (監督:パワン・クマール 2013年インド映画※カンナダ語)

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バンガロールの下町の映画館で働くニキルは不眠に悩んでいる。あるとき、眠れないまま夜の街路に出た彼は、怪しげな売人から「ルシア」という睡眠薬を買う。それは単に睡眠に導入するだけでなく、極上の夢を見せ、その夢を次の晩に引き続き楽ませるというものだった。(SIFFJ HPより)

出演:サティーシュ、シュルティ・ハリハラン

貧乏でモテない映画館雑用人ニキルが、「ルシア」という睡眠薬の作用により「イケてる自分の登場する夢」を見始めるが……というミステリアスなドラマです。

その夢に登場するのはビッグな映画スターの自分と超美人な新人女優のシュウェータ。しかしそのヒロインとそっくりな女性シュウェータを現実世界で見かけたばかりにニキルの人生は錯綜してゆくのです。

つまり夢が現実を予言するのですが、しかし現実は夢のようには上手く運びません。とはいえ苦労に苦労を重ねシュウェータと交際することに成功したニキルだったのですが、今度は夢の中のニキルがシュウェータと破局を迎える。こうしてドラッグが誘う明晰夢に沈溺するダメ男を主人公としながら、いつしかそれが代償行為の夢であることから乖離して、一つのモチーフから枝分かれした二つの物語へと発展してゆくのがとてもユニークなドラマなんですね。

構造的に「夢なのか現実なのか?」というドラマではありますが、むしろ、「何が現実なのか?」がこの物語の根幹となるテーマなのではないのでしょうか。それは「現実を選ぶという事はどういうことなのか?」ということでもあります。そしてこの作品は同時に、とてもコミカルでなおかつ眩しいロマンスを瑞々しく描いた作品でもあるのです。