インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

伝説のスパイ、タイガーが帰ってきた!/ 映画『Tiger Zinda Hai』

Tiger Zinda Hai (監督:アリー・アッバース・ザファル 2017年インド映画)

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伝説のスパイ、タイガーは生きていたッ!?2012年に公開され大ヒットを飛ばしたインド映画『タイガー 伝説のスパイ』の続編が登場です。主演はもちろん前作と同じくサルマーン・カーンとカトリーナ・カイフ。監督は『Mere Brother Ki Dulhan』(2011)、『Gunday』(2014) 、『Sultan』(2016)のアリー・アッバース・ザファル。

前作をさらっとおさらいしてみましょう。主人公はインド諜報局RAW最強のスパイ、タイガー(サルマーン・カーン)。そんな彼は新たなミッションの最中、強烈な恋に落ちてしまう。しかし愛した相手ゾーヤー(カトリーナ・カイフ)は、実はパキスタン情報部ISIのスパイだった!許されない逃避行を決意した二人を祖国の追手が執拗に追い掛ける。果たして二人の運命は!?……というもの。

というわけで今作『Tiger Zinda Hai』です。物語の舞台となるのはイラクの架空の都市イクリット。狂信的イスラム過激派組織ISCの指導者アブー・ウスマーンと戦闘員たちが病院に立て籠もった。人質はインドとパキスタンの看護婦40人。だが、テロ集団殲滅を目論むアメリカは空爆を仕掛けることを決定。アメリカの冷酷な決断に、RAWは7日間の猶予を求める。そして事件解決のために、8年間姿を消していたあるスパイに指令が下った。その男の名は、タイガー。

面白かったああああ!!!いやー最初「カップルになったインドとパキスタンのスパイがいったい誰と戦うの?」と思ってたら今度の敵がテロリストだったのでさもありなんって感じでしたね。このテロリストというのがイスラム教過激派で黒装束でデカイ旗を掲げてる、どう見ても例のISISなんですよね。そしていかにもISISってな残虐さを持ち合わせていて、人質にオレンジのつなぎを着せて処刑するところをネット放送する、なんていうのも一緒ですね。ISISを元にしたテロリストを映画に登場させたのってハリウッド映画を含めてもこの映画が一番早いんじゃないのかなあ?

そんなテロリストに拉致されたインド・パキスタン双方の人質救出ミッションを、その両国の諜報組織が共闘して行うというのも、現実の政治世界では仲の悪い両国の平和共存を訴えててよかったですね。インド映画って、こういった政治世界のみならず平等や友愛といった理想主義を衒いなく描けるから実はとても健全だなあと思えるんですよ。可笑しかったのはインド・パキスタン双方の諜報員が初顔合わせした時にパキスタン側が「サニー・デーオールのGadarがー」とか言ってたことで、これはデーオール演じる主人公がパキスタン兵をぶち殺しまくるトンデモ映画『Gadar: Ek Prem Katha』を指しているんですが、こういった自己批判的な部分にも健全さを感じました。

 そしてなにしろ映画の主役、サルマーン・カーンとカトリーナ・カイフです。インド映画にあまり馴染みの無い方に紹介してみると、サルマーン・カーンはアサルトライフルの似合うこんな激シブのスター俳優で、日本では『ミモラ 心のままに』 (1999)、『ダバング 大胆不敵』(2010)の公開作があります。

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カトリーナ・カイフRPGの似合うこんな激マブの美人女優です(いいのかこんな紹介の仕方で)。日本では『命ある限り』(2012年)、『チェイス!』(2013年)の公開作があります。

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二人が演じるタイガーとゾーヤーは、お互いスパイとしての最高のスキルを兼ね備えており、どんなに危険であろうとその中に果敢に飛び込み、常に対等に渡り合いながら事態に対処してゆきます。男だから女だからといった部分の無いこの"対等さ"がとてもいいんですね。映画の中で何度か演じられる、一方が危機なら一方が疾風のように駆け付けてこれを助けるといったコンビネーションの良さは、まさしく最高のパートナー同士だと感じさせることでしょう。

タイガー役のサルマーン・カーンは久々のアクション作を惚れ惚れする様な男臭さで演じ切り、「あのマッチョでタフなサルマーン兄ィが帰ってきたッ!!」と実にワクワクさせられましたね。キメキメのスローモーション・シーンはもとより、ガトリング砲ぶっ放すシーンなんてもはや『ランボー』状態ですよ!オレなんて「みんな殺っちまっておくれサルマーン兄ィ!」と画面に声援送ってましたよ!なんの脈暦もなく上半身裸になっちゃうシーン(そしてその後は何故か着てる)とかファンとしてもう悶絶モノですよ!一方ゾーヤー役のカトリーナ・カイフもまた驚くほど素晴らしいアクションを連発し、『Bang Bang!』(2014)以来の最も素晴らしいアクトを見せてくれたのではないでしょうか。

世界の映画レベルで見ても全く遜色のないガチで直球な娯楽アクション作品として完成している今作ですが、逆に前作で見られたユーモアやロマンス要素は後退しており、前作ファンにはその点が物足りないという批評もあるようです。しかし自分はむしろ今作のハードな作りの方にハマれましたね。こういった作りになった背景には、1作目の後に世界規模でヒットしたインド・アクション映画『チェイス!』があったこと、『Holiday - A Soldier Is Never Off Duty』(2014)、『Baby』(2015)、『Phantom』(2015)といった生々しい対テロリズム映画が作られてきたこと、そういった作品の後にヒットが望め、さらに今日的なスパイ・アクション映画を作るには?と考えられた結果なのではないか、と思えましたね。

そんなわけで『Tiger Zinda Hai』、インド映画がどうこういう以前にド派手で熱くなれるアクション映画がお好きな方ならきっと楽しめる作品なんじゃないでしょうかね。いやーこれ、日本で字幕付きで公開してくれないかなあ!

■サルマーン・カーン出演作品
タイガー 伝説のスパイ [DVD]

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ダバング 大胆不敵 [DVD]

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カトリーナ・カイフ出演作品
命ある限り [DVD]

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