インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

個人的ボリウッド・カルト・ムービー11選!

先日ポストした記事『英タイムアウト誌の選ぶボリウッド・ベスト100作品を全て観て全ての感想を書いた。』が結構皆さんに楽しんで貰えたようなので何か便乗企画でも捏造しようかと考えたんですけどね。 

最初は個人的な『ボリウッドベスト10!』なんてェ記事を書こうかとも思ったんですが、思いつく作品はというとシャー・ルク・カーン主演映画と日本公開インド映画が大半で、なーんか面白みに欠ける。これだったらもっとインド映画に詳しい方にやってもらったほうがいい。

それで思いついたのがボリウッド・カルト・ムービー特集』、オレがこれまで観たボリウッド映画の中から、なーんだかちょっと変わった作品、クセのある作品、灰汁の強い作品を幾つかピックアップしてみたいと思ったんですよ。まあ書いてる本人も変わりもんなんで、このぐらいの企画が順当なんじゃないかと。

例によってピックアップするのはボリウッド作品限定です(ひょっとして違うの混じってたらごめんなさい)。実の所、『カルト』とよぶに相応しい作品は南インド映画のほうが断然多い気がするんですが、こちらのほうは全く詳しくないんでやれません(だから、南インド映画に詳しい人、誰かやってよー)。それとあくまでオレの観測範囲内の作品だけですのでここに挙げたのよりもっとスゲエカルトボリウッドムービーもきっとあると思います。だからそこのインド映画通のアナタ、もしそんな映画を知っていたら是非教えてくださいよー。

というわけでいつものようにダラダラと行ってみましょう!

 

■Satyam Shivam Sundaram (監督:ラージ・カプール 1978年インド映画)

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ボリウッド・カルト・ムービー」と言ったらオレはまずこの作品を真っ先に思い浮かべます。というかこの作品を再び紹介したいからこの特集を考えたほどなんですよ。物語は「顔に火傷跡がある娘とそれと知らずに恋してしまった男」なんですが、なんとこの男、娘と交際を重ね結婚するまで顔に火傷跡があることを知らなかった!?そして結婚式当日にそれを知って男は気が狂い、「お前は本当の俺の恋人じゃない!」と喚き散らした挙句、”顔に火傷跡なんかない本当の恋人”を探して彷徨い歩くんです!狂ってるのう!狂ってるのう!それだけじゃなく、なんとクライマックスでは円谷プロかと思っちゃうような大天変地異まで起っちゃう!?全編を通し江戸川乱歩作品みたいなおどろおどろしさと幻想性が漂い、「ボリウッド・カルト・ムービー」の名にし負う超怪作であり名作でもある必見の作品という事ができるでしょう。

■Bandit Queen (女盗賊プーラン)/ (監督:シェカール・カプール 1994年イギリス/インド映画)

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この作品、1963年に生まれ、山賊の女首領になり様々な略奪と殺戮を繰り返したプーラン・デーヴィーという女性の実話ドラマなんですよ。映画では描かれませんがこのプーラン・デーヴィー、逮捕された後に政界に進出し活躍しつつも2001年に38歳で暗殺されてしまうんですね。文字通り数奇な運命を歩んだ女性の物語なんですが、カースト最低位に生まれた彼女が11歳で幼児婚させられたり差別や虐待や性的暴行を受けたりされる様が実に生々しく描かれているんですね。観ていて「インド映画でここまで描いちゃうんだ!?」とびっくりしたぐらいです(イギリス資本が入っていたから可能だったのでしょう)。しかも監督はその後イギリス映画『エリザベス』を撮ることになるシェカール・カプール なんですね。

■Quick Gun Murugan (監督:シャシャンカ・ゴーシュ 2009年インド映画)

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インド映画なのに西部劇、という段階でよく分からないんですが、主人公が一度あの世に行って蘇ってしまう!?というさらに奇妙奇天烈な設定で、さらには「ノン・ベジタリアンを世にはびこらせようとするマフィアと戦うベジタリアンの戦士」となる、全くもって意味不明な展開を見せる作品なんですね。それだけじゃなく、映画全編がティム・バートン的な怪しげな美術センスで統一され、主人公に至っては顔が髭の生えたパタリロ、という気の遠くなるよなキャラクターなんですよ。もはやボリウッド・カルト・ムービーの極北を行くひたすら唖然とさせられる作品で、輸入DVDを見つけたら即買いでしょう!?

■karan Arjun (監督:ラーケーシュ・ローシャン 1995年インド映画)

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シャー・ルク・カーンとサルマーン・カーンの共演作!というからどんなゴージャスな作品かと思ったらなんと血と殺戮の復讐劇で、これがもう【ボンクラ映画】と太鼓判を押したくなるようなやりたい放題の大怪作!チープな映像は往年の香港映画のようだし血生臭いアクションシーンはタミル映画みたいだし狂ったように何度も繰り返されるフラッシュバックシーンはまるでヨーロッパの古典ホラー!?しかし暗い土俗の匂いのするカーリー神への祈りや輪廻転生テーマはまさしくインドで、これらがどろどろぐぢゃぐぢゃと混じり合いながら最後は家族愛でシレッとまとめられちゃうなんてまさにカオス!

■Andaz Apna Apna (監督:ラージクマール・サントーシー 1994年インド映画)

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そしてこちらはアーミル・カーンとサルマーン・カーンの夢の共演作!?なんですが、やっぱりこれもとんでもない作品でした。コメディ作品なんですが徹頭徹尾ひたすらしょーもないナンセンスなアホアホの限りを尽くし、これはインドのドリフなのか!?はたまた俺たちひょうきん族なのか!?そうなのか!?とTVの前で仁王立ちしそうになってしまいます。特に二人の怪しげな七変化の様はあたかもタケちゃんマンのたけしとさんまのよう……。インド映画名物歌と踊りのシーンも情緒もへったくれもないタテノリひたすら悪ふざけの限りを尽くしたこの作品、主演の二人は20代だったようですが、こんな映画には二度と出演しないだろうことを考えるとなおさら貴重なカルト作です!

■Kati Patang (監督:シャクティ・サーマンタ 1971年インド映画)

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原作がアメリカのミステリ小説家ウィリアム・アイリッシュによる『死者との結婚』という作品で、物語それ自体は確かにミステリとして進行しそれなりの結末を迎えるのですが、この作品を「カルト」と呼びたいのはその冒頭30分のとんでもない展開なんです!まず主人公は結婚式のその日に元カレの手紙によろめいてその場で結婚を破棄し元カレの元へ向かいますが、その元カレは別の女とベッドでムフフしていて、嘆きに塗れつつ家に帰ると叔父が死んでいて主人公は孤児になり、もうイヤ!と電車に乗ると今度は列車脱線の大事故に遭い、命からがらタクシーに乗るとなんと運転手に襲われ、そんな彼女を助けたのは彼女が結婚を破棄したその男だった!?……という不幸の絨毯爆撃みたいな凄まじい展開が冒頭たった30分で起こっちゃうんですよ!?この唖然とするスピーディーな地獄落ちの描写はまさに「カルト」と言えるでしょう!

■Hum Aapke Hain Koun..!(監督:スーラジ・バルジャーティヤ 1994年インド映画)

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インド映画の名作中の名作と謳われる大人気作なんですが、普通の日本人が真に受けてうっかり観てしまうととんでもない目に遭わされます。どういう内容なのかというと、全部で3時間以上あるインドらしい長い映画なんですが、その3分の2ぐらいは殆ど結婚式シーンという映画なんですよ。つまり上映時間3時間のうち2時間ぐらいが結婚式シーンということなんですね!いくら結婚式大好きなインド人とはいえやり過ぎなんだよッ!!そしてさらにそこにインド映画十八番の歌と踊りがこれでもかこれでもかと盛り込まれているんですが、通常物語の間に歌と踊りが挿入されるのを、この映画は歌と踊りが延々と続き、その合間に思い出したかのように物語が挟まれるという凄まじい徹底ぶりなんです!というか物語なんて殆ど無い!!

■Koyla (コイラ〜愛と復讐の炎)(監督:ラーケーシュ・ローシャン 1997年インド映画)

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はい。先程紹介した『karan Arjun』のラーケーシュ・ローシャン監督が1995年に撮った『karan Arjun』に負けないほどにとんでもなくやりたい放題な映画、それがこの『Koyla (コイラ〜愛と復讐の炎)』です。物語は因業な地主にかどわかされた娘をシャールク演じる主人公が救う!というものなんですが、なんかもー全篇ツッコミ所満載で観ていてツッコミ疲れしてしまうほどのめくるめく展開を楽しむことができるんです。その量はあまりに膨大でここでは書き切れませんので記事のリンクを確認してください。ただ一つ言えるのは、この作品、実はスタローン映画『ランボー』オマージュの作品だった!?という点でありましょう。ラストの炎に燃えるシャールクの疾走シーンはインド・アクション映画の語り草となっております(ホントかよ)。

■Gadar: Ek Prem Katha (監督:アニル・シャルマー 2001年インド映画)

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分断されたインド・パキスタンの住民同士の憎しみと争いを描いた作品なんですが、なんかもう全編に渡って血管ブチ切れそうなというか既にブチ切れて全身血塗れになってるんじゃないかと思わせるほどのとんでもないテンションで描かれるアクション映画なんですな。この映画作った皆さんは全員血圧の心配をした方がいいです。テンション高めですから冒頭のインド行き列車の虐殺シーンはもはやホラーだろ!?と思っちゃうほどの死体と流血に塗れまくっており、中盤のドラマは出てくる人間誰もが大嵐のように感情の荒れ狂う展開を見せ、そしてクライマックスではパキスタンに潜入した主人公がこれでもかこれでもかとパキスタン兵を大量虐殺しております!いいのかこれ!?

■Gumnaam (監督:ラジャ・ナワテ 1965年インド映画) 

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アガサ・クリスティが執筆した超有名な古典ミステリ小説『そして誰もいなくなった』を原作としたインド映画なんですが、まあ確かに孤島に辿り着いた人々が一人また一人と殺されてゆくのは原作通りなんですけどね。なんとこの作品、歌って踊ってばかりいて全然人が死にません!冒頭の殺人以外は、映画が始まって50分ぐらい経ってからやっと一人殺される程なんです。映画自体は2時間半あるんですけどね。で、殺されたと思ったらまた歌と踊りです!映画では10曲のソングシーンがあり、実際は歌だけのシーンのほうが多いのですが、絶海の孤島に訳も分からず取り残され、謎の殺人者が次々と人を殺し続けているという状況なのに、その合間に歌って踊ってって、みんないったいどういう神経してるんだ!?

■Anjaam (地獄曼陀羅 アシュラ) (監督:ラーフル・ラワィル 1994年インド映画)

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今では「キング」の名で親しまれ絶大な人気を誇る大スター、シャー・ルク・カーンがサイコなストーカーとなって一人の美女を地獄に突き落とす!というサスペンス作なんですが、いやもうこのシャールクがいやらしくていやらしくて、デビュー間も無い頃とは言え「なんでこんな作品に……」とは思わされますが、それだけではこの作品を「カルト」とは呼べません。この作品をカルトたらしめているのは、ただでさえ日本でDVDリリースの少ないインド映画にもかかわらずこんな映画がDVD化されていること、そのタイトルが『地獄曼荼羅 アシュラ』とかいう相当おどろおどろしい邦題になっていることなんですね。日本版ジャケットなんてこんなですよ!?

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メーカーさん、他にもっとソフト化したほうがいいインド映画があっただろうによう……。