インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

インド/タミルのホラー映画『マーヤー /MAYA』を観た

マーヤー /MAYA (監督:アシュウィン・サラヴァナン)

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<あらすじ>チェンナイの郊外にあるマーヤヴァナムの深い森。近寄る者もいないその森は、過去の陰惨な記憶を封じて静かにたたずんでいた。イラストレーターのヴァサントは、出入りしている雑誌社の編集者から、この森にまつわる怪談を聞かされ、信じはしないものの興味を惹かれる。同じころ、女優志望のシングルマザー、アプサラは、女性が主役のとある映画のオーディションを受ける。彼女には、その作品がマーヤヴァナムにまつわるものだとは知る由もなかった。出演:ナヤンターラー、アーリ、ラクシュミ・プリヤー、マイム・ゴーピ
(2015年/ タミル語 / 142分)

 タミルのホラー映画です。初っ端から「過去精神病院で起こったおぞましい事件」の話やら心霊写真やらが描かれ、「ま、順当なホラーかな」と余裕で観てたんですが、なぜかモノクロ画面とカラー画面の二つで別々の物語が進行していることに気付き始めると、この構成が物語をいったいどこへ向かわせているのか段々気になってくるんですよ。

そしてこのトリッキーな構成の意味がクライマックスで明らかにされた時に、この作品のクオリティの高さを思い知らされた感じですね。欧米のホラー作品みたいに目を覆うような残酷さや肉体破壊があるわけではないんですが、それを補って余りあるしっかりとしたシナリオなんですよ。それはただホラー演出に終始するだけではなく、人の悲しい運命やその絆をエモーショナルに描き出そうとしていて、ここにこそこの物語の真骨頂があると思いました。

舞台となる南インドの暗い森は、これもまた欧米ホラーの寒々とした雰囲気とはまた違うねっとりと湿った熱を帯びた暗さで、この「闇の持つ熱量」が何かがそこに蠢いているような独特の薄気味の悪さを醸し出してるんですね。このダーク・ファンタジー的な要素もまたこの作品を見せるものにしていました。