インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

スーパースター・ラジニカーント最新主演作『Darbar』を観た!

■Darbar (監督:AR.ムルガダース 2020年インド映画)

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スーパースター・ラジニカーント主演による今年1月に公開されたばかりのタミル語アクション映画『Darbar』がDVD化されたというので早速購入して視聴してみた。内容は復讐に燃える警察長官が巨大麻薬組織のドンと全面対決する!というもの。監督であるAR.ムルガダースはタミル・ヒンディー語両方で活躍し人気を博す監督で、オレも幾つかの作品を楽しんで観た記憶がある。 

【物語】悪党ばかりが連続して殺害される事件が勃発する。事件を起こしたのはムンバイ警察長官のアディティーヤ(ラジニカーント)。いったい何が彼をこのように暴走させたのか。過去、彼は人身売買組織を相手に熾烈な捜査を展開していた。その狡知に長けた作戦で組織を撲滅させたアディティーヤだったが、それと繋がりのある巨大麻薬組織の恨みを買い、一人娘ヴァッリ(ニウェーダー・トーマス)を殺害されてしまったのだ。燃え上がる憎悪に鬼神と化したアディティーヤは超法規的な手段により麻薬組織のドン、ハリ・チョープラー(スニール・シェッティ)に肉薄してゆくが、ハリもまた、恐るべき計画を用意してアディティーヤを叩き潰しにかかるのだった。

大枠ではこうした非常に血生臭い警察アクション作品ではあるが、映画では時系列を前後させながら、アディティーヤと娘ヴァッリとの楽しく幸福な日々、アディティーヤが恋した娘リリー(ナヤンタラ)との嬉し恥ずかしロマンス・シーンを交え、もちろん歌と踊りもありなバラエティー豊かなマサラ映画として完成している。コメディ・リリーフとしてインド映画の人気者ヨーギ・バーブが登場しているのも見逃せない。それにしたってラジニカーントの描かれ方が若い若い!もはや70に手が届かんとする彼だが、特殊メイクで肌はツヤツヤ頭フサフサの精気漲る中高年男を演じている。アクションなども代役を立てているのだろうが、本人が演じるシーンでも矍鑠とした動きを見せていた。

映画の規模としては中程度のスケールで、ラジニカーント主演作としては大人し目に見えるかもしれない。しかし逆にオレにはこの程度のスケールのほうが安心して観る事が出来た。というのは最近のラジニカーント作品は彼を神格化し過ぎているような空気があり、それは彼のカリスマ性を十分映画の中で発揮させることができてはいるが、あまりに神懸りなので時々シラケてしまうことが多かったのだ。この『Darbar』においてもラジニカーントはダーティーハリー顔負けの唯我独尊振りと切れ味のいい機転、そして快刀乱麻なアクションで悪党どもを次々と叩き潰してゆくが、それでも娘を失くして悲しみに暮れる人間的要素もしっかり兼ね備えている。シナリオはラジニカーントのカリスマをきっちり生かすが、そのカリスマ頼みの物語に堕していない。なんとなれば主演がラジニカーントでなくても物語が成立するような性質を持っている。

そういった部分で、ナンバーワン俳優主演による「お祭り映画」としての派手さには欠けるのだが、作りが非常に手堅く、アクション映画として及第点ではないかと思う。AR.ムルガダース監督による演出はスピード感たっぷりで緩急自在、時として奇想天外な物語展開を見せ、スニール・シェッティ演じるマフィアのドンの凶悪さも物語を大いに盛り上げていたと思う。ヒジュラたちの楽しげな歌と踊りと同時進行して緊迫のアクションが炸裂するシーンなどは大いに魅せられた。ただしリリーとのロマンスのその後がうやむやになってしまうのがちょっと惜しく感じた。

ところで今回購入したDVD、タミル語による輸入盤なのだが、これがなんと日本語字幕が入っていて、視聴が実に楽だった。部分的におかしな翻訳があったがそれも些末なもので物語理解には支障は無かった。調べるとタミル語映画DVDにはこのような日本語字幕付きのものがちらほら見られ、理由はわからないが(日本人ファンの尽力もあるのらしい)今後も増えてくれればありがたい。いや最近インド映画DVDとか全く観なくなったのは、英語字幕を解読するのが相当かったるくなってしまったのもあったもんだから。こちら(↓)などで購入できる。

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