インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

サルマーン兄ィの新作インド映画『Race 3』が思いっきりしょーもなかった件について

■Race 3 (監督:レモ・デスーザ 2018年 インド映画)

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本国インドとほぼ同時に日本でインド映画を上映する恒例のインド映画上映会、今回の作品はなんとサルマーン・カーン主演のアクション映画『Race 3』だ!うおおおうこれは大いに盛り上がるね!……とばかりに勇んで劇場に足を運んだんだが、観終ってみるとこれがもう相当しょーーーもない作品で目が点になったまま帰ってきた……。

一応説明するとこの『Race 3』、ナンバリングされている通り「Race」シリーズの3作目という事になっている。1作目『Race』(2008)は監督アッバース&ムスタン、アニル・カプール、サイフ・アリ・カーン主演。続編となる2作目『Race 2』(2013)は監督・主演とも一緒だがさらにディーピカー・パードゥコーン、ジョン・エイブラハムが出演者に加わりこちらは大ヒットした。オレは2作目しか観ていないないんだが「ご都合主義大爆発なお話だったな」程度の感想だった。

そしてこの3作目では監督をレモ・デスーザに変え、サルマーン・カーン、アニル・カプール、ボビー・デーオール、ジャクリーン・フェルナンデスを主演に迎え、前2作とは物語的に繋がっていない作品として作られている。監督であるレモ・デスーザは『ABCD: Any Body Can Dance』(2013)、『ABCD 2』(2015)、『A Flying Jatt』(2016)といった監督作品がありオレ個人はどの作品も嫌いじゃない。

で、今作『Race 3』だが、お話はというと世界を股にかけ武器や麻薬を売買する犯罪帝国を仕切る一家の、陰謀と疑惑と裏切りと愛憎に満ちた、虚々実々の駆け引きを描くところとなる。なにしろアクションはとことんド派手!ダンス・シーンは盛り沢山!物語はどんでん返しに次ぐどんでん返し!といった感じで、こってりたっぷりサービス満点!な作りにはとりあえずなっている。予告編だけ観るなら結構面白そうなのだ。

ところがその満点なサービスのクオリティが低いので目も当てられないのである。アクション・シーンは確かに派手だが演出が一本調子で次第に飽きてくる上、見栄えの良さばかり追求した挙句物語の内容と齟齬をきたしているのだ。ダンス・シーンは監督自身がコレオグラファーでありダンサーであるせいかたっぷり力が入っているのだが、その力み過ぎが仇となり「今時これなの?」と思ってしまうぐらい古臭い演出だ。どんでん返しに次ぐどんでん返しが連続する物語は、どんでん返しそれ自体を目的化してしまったがゆえに人間関係の描き方がどんどん破綻してゆき、だんだんもうどうでもよくなってくる。もはやクライマックスなんてギャグレベルだった。

あとこれは個人的な趣味になってしまうが、悪党ばかりが登場し、その悪党たちがどれだけ悪党なのか描きまくっちゃう物語、というのにあまり食指が動かなかった。悪党同士のロマンチックなダンスシーン見せられても「ほえ?」って思っちゃうよ。サルマーン兄ィに関しても『Bajrangi Bhaijaan』(2015)、『Prem Ratan Dhan Payo 』(2015)、『Sultan』(2016)、『Tiger Zinda Hai』(2017)と立て続けに名作・快作に出演してきただけに、『Jai Ho』(2014)や『Kick』(2014)レベルにしょーもないこの作品への主演はどうにも残念だなあ。とはいえそこは大スター、存在感は確かにあって、決して「観て損した」とまで思わせないのは流石かな。まあ次作に期待、ということで。

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