インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

インドのお下劣3人組、幽霊屋敷で大騒ぎ!?〜映画『Great Grand Masti』

■Great Grand Masti (監督インドラ・クマール 2016年インド映画)


「ドスケベしかない。俺たちにはもう、ドスケベしかないんだ」と言ったかどうかは分かりませんが、ドスケベお下劣3人組がとことん下ネタギャグを連発するというひたすらしょうもないMastiシリーズ第3弾『Great Grand Masti』であります。シリーズはこれまで『Masti』(2004)、『Grand Masti』(2013)というタイトルで公開されており、自分は2作目しか観ていませんが、インド男のドスケベに賭ける熱い情熱とほとばしる妄想に相当ゲラゲラ笑わされた記憶があります。いやあどこの世界も男のお下劣ぶりは一緒だね!

とはいえそこはドスケベには何かとうるさい宗教国インド、下ネタとはいってもムニョムニョっとぼかすかほのめかすかメタファーを借りてお茶を濁すか程度で、【モロ】な表現は一切ありません。可愛いというか小学生レベルというかのび太さんのエッチ!」程度のもの。せいぜいが「アハ〜ン」「ウフ〜ン」ぐらいでしょうか。しかしそれでも懸命にドスケベさを追及しお下品とお下劣に徹しようとする製作者たちの熱意には涙を禁じえません。さっきまでゲームやってたので単に目がしょぼしょぼしているだけのような気もしますが。

さて今作もまた平凡な結婚生活に辟易してきた3人のバカが、夢のようなアバンチュールを求めお下劣な妄想に膨らんだ股間を抱えて羽を伸ばしたのはいいけれど、逆に股間を捻り潰されるような悲惨な目に遭う、というどうにもトホホなドラマが展開します。3人のバカだけに「きっと、うまくいく!」と思ったのでしょうが、心根のやましい人間のとった行動がアーミル・カーン主演映画のような感動的な結末を迎えないことは火を見るよりも明らかです。

3バカ主人公の名はアマル(リテーシュ・デーシュムク)、ミート(ヴィヴェーク・オベロイ)、プレーム(アーフターブ・シヴダーサーニー)。3人は妻帯者でしたがそれぞれ結婚生活に不満を抱えていました。「もうヤダこんな生活!」3人はこっそりアマールの先祖の屋敷がある村へと向かいます。そこは美女の宝庫といわれていたからです。しかーし!待っていたのはお婆ちゃんばかり!「もうヤダこんな村!」ほうほうの体で逃げ込んだ先祖の屋敷ですが、なんとそこには処女のまま二十歳で死んだ女の亡霊が取り付いており、3人に肉体関係を迫るのです!「もうヤダこんな屋敷!」しかーし!呪いのかけられた屋敷から3人は逃げることができなかったのです!

という訳で今回の『Great Grand Masti』、なんと3バカトリオが幽霊屋敷に迷い込む、ドスケベ+ホラーという内容なんですね!いうなればドスケベ・ホラーということでしょうか!ってかそのまんまやん!でもなにしろバカなのでホラー・コメディという括りが正しいでしょうか。まあオレもたまには正しいことを言います。で、女幽霊は「あなたたちの内の誰か一人が私とウッフンして天国に行ってくれればいいの……」とか言っており、その為3バカは「お前が天国に行け!お前が天国に行け!」という目も当てられない醜い争いを繰り広げるんですな!

そういった部分で実の所お下劣要素は若干後退しています。いやそれでも十分お下劣ですが。しかし、とことんドスケベで突き進むのかと思いきや、そこにホラー要素が持ち込まれることでまた別の味わいの作品となっている部分で思わぬ収穫でした。そしてこの女幽霊、昼間も普通に出現するし、結構いろんな魔力を使って3バカたちを翻弄するもんですから、幽霊というよりも殆ど妖怪です。こんな女幽霊ラーギニーを演じるはウルヴァシー・ラウテーラー、なかなかにエロいです。エロくてゴスい歌と踊りもなかなかです。女幽霊に取り付かれた男の末路を描いた物語は多々ありますが、こんなエロい幽霊なら取り付かれてもいいかも……いやでも一緒に昇天は勘弁して!

主人公3バカはなにしろドスケベ以外に取り柄の無いバカなので太刀打ちできる術もなく、その運命はもはや風前の灯と思わされます。しかし、シナリオがいい具合にあっちこっちに転がり、最後はきちんと収まるところに収まってしまうんですね。一見ハチャメチャな作品ですが賑やかしの無駄な描写だと思っていたものが後から生かされていたりするんですよ。前作ではお下劣作品とはいえシナリオの巧さにびっくりしましたが、それほどではないにしろ今作も手堅いまとめ方が好印象でした。いやよく考えたらホントにそれでいいのか!?とも思いましたが!