インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

金持ちのボンボンが労働者階級の女性に恋をして…映画『Maine Pyar Kiya』

■Maine Pyar Kiya (監督:スーラジ・バルジャーティヤ 1989年インド映画)


■金持ちのボンボンが労働者階級の女性に恋をして…

金持ちのボンボンが労働者階級の女性に恋をして…という1989年公開のインド映画です。主演はこの作品がデビュー第2作目となる非常に初々しいサルマーン・カーン、ヒロインにバギャーシュリー。監督は『Hum Aapke Hain Koun..!』(1994)で再びサルマーンを主演に据えたスーラジ・バルジャーティヤ。サルマーン最新作『Prem Ratan Dhan Payo』(2015)もこの監督ですね。それとあとこの物語、一羽の鳩が主役を食う勢いの大活躍をします…!?

《物語》田舎町に住む機械工カランは愛娘スマン(バギャーシュリー)の結婚資金を稼ぐ為ドバイへ出稼ぎに行く。その間、スマンはカランの幼馴染で資産家のキシャンの屋敷に預けられることになる。キシャンには息子のプレム(サルマーン)がおり、スマンとプレムは次第に惹かれあってゆく。しかしキシャンは自分の息子と身分違いの娘との恋に激怒、丁度ドバイから帰ってきたカラン共々侮辱した挙句追い帰してしまう。プレムは父のそんな態度にブチ切れて家を飛び出し、カランの元の訪れてスマンとの結婚を懇願する。だが侮辱されたカランはそれを許さず、スマンと結婚したければ一ヶ月で2000ルピー稼いで来い、と言い渡す。そしてプレムの血の滲むような努力の日々が始まる。

■初々しい主役と可憐なヒロイン

まあこんなお話なんですが、途中から「なんかに似てるなあ?」と思ってたら、恋した女性のために金持ちのボンボンが農村で働く2013年のプラブデーヴァ監督作『Ramaiya Vastavaiya』(レヴュー)なんですね。実際プラブデーヴァ監督はこの『Maine Pyaar Kiya』にインスパイアされたようですが、『Maine Pyaar Kiya』自体も『I Love You』というタイトルのベンガル映画のリメイクなのだそうです。どちらにしろ「困難を乗り越えて結び合う恋」といったオーソドクスなインド映画のプロットを持っており、安心して観られる作品でした。

映画のほうは前半でプレムの家を舞台にスマンとプレムが友達感覚のつきあいから次第に恋へと発展してゆく様子を、後半ではスマンとの結婚のためにトラック運転手や採石場で汗水たらすプレムの努力の様子が描かれてゆきます。プレムを演じるサルマーン・カーンはデビューしたてということで実に若々しく初々しく、そして結構な美男子なんですね(今でもイイ男ですが)。最近のサルマーンさんよりもシュッとしてて、『ダバング 大胆不敵』前後の筋肉ムキムキという程でもないんですが、それにしてもなんだか意味もなく半裸をさらしたがるところがサルマーンさんらしくていいですね。

一方ヒロインを演じるバギャーシュリー、この作品以外にヒット作はなかったのらしいのですが、少なくともこの作品ではとても素敵なインド女優なんですよ。インドの女優さんはいずれ劣らぬ美人揃いで見るたびに驚かされますが、そんななかでこのバギャーシュリー、特に図抜けて美人というわけではないんですけれども、雰囲気とか立ち振る舞いにとても惹きつけられるものがあるんです。それは一言でいうなら可憐さ、ということでしょうか。小柄でちょっと幼い感じが、他のインド女優と違ってなんだか可愛らしいんですね。育ちが相当良い方なのらしいですが、とても朗らかな笑顔や喋り方は、そもそもこの方の素なのではないかと思ってしまいました。

■そしてハトは飛び立った!?

物語は1989年作品という時代こそ感じさせますが(著作権の怪しいアメリカン・ポップスがガンガンかかります…)、『Hum Aapke Hain Koun..!』で見せられたスーラージ監督らしい賑やかな演出のせいで決して退屈しないんですね。前半のコミカルさもいいんですが、主人公が愛を勝ち得るために生傷だらけになって働く後半はなかなか盛り上がるんですよ。それだけではなく、主人公を陥れようとする悪漢すらも現れて大立ち回りが演じられます。この映画でのサルマーンさんは『ダバング』みたいに無敵なわけではないのでボコボコにされます。それでも歯を食いしばって立ち上がる主人公の姿がいいんですね。

それにしてもこの作品、中盤から一羽のハトが主人公カップルの周りになんだかまとわりついているんですよね。悪漢に銃で撃たれようとしていたのを助けた、というのもあるんでしょうが、それにしてもこんなにハトをフィーチャーしたがるとはジョン・ウーの影響でもあるのでしょうか…。と思ってたら最後でその理由が明らかになります!<span class="deco" style="color:#FF0000;">(注!ここからネタバレです!!!)</span>クライマックス、悪漢に谷底に落とされロープ一本でぶら下がる絶体絶命の主人公とヒロイン!悪漢はナイフを取り出しロープを切り始めた!そこへ!かつてその悪漢に苛められたハトが飛んできて「くるっくー!」と鳴きながら悪漢をつつき倒し、悪漢は断末魔を上げながら谷底に!メデタシメデタシ!