インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

ブサメン男の不可能な恋の行方〜映画『Pyaar Impossible!』

■Pyaar Impossible! (監督:ジュガル・ハンスラージ 2010年インド映画)


『Dhoom』シリーズで愛嬌のあるブサメン、アリーを演じて一部で絶大なる人気を誇る(?)ウダイ・チョープラが主演をはったラブ・コメディです。今回ウダイが演じるのはイケテないブサメン…ってやっぱりブサメンかよ!?そんなブサメン・ウダイの相手役となるヒロインがかつてミス・インド2000にも選ばれた美人女優プリヤンカ・チョープラ。いやー、気の遠くなるような美女と野獣ぶりではありませんか!ちなみにこの作品、製作・脚本もウダイが担当しており、自らのブサメンぶりを天高らかに歌い上げるといった困った内容になっております。いいのか、ウダイ。

《物語》アメリカの大学に通うアバイ(ウダイ・チョープラ)はダサダサオタクのキモメンでしたが、大学一の美女アリーシャ(プリヤンカ・チョープラ)にメロメロでした。しかしたびたび羽目を外し過ぎるアリーシャに父親が激怒、彼女は大学を去ることになり、アバイの恋は終わったかに見えました。それから7年。フリーのプログラマーとして活躍するアバイは画期的なソフトウェアを開発しますが、投資家のバルン(ディノ・モレア)に騙し取られてしまいます。バルンがソフトを売り込もうとしているシンガポールの会社に乗り込んだアバイでしたが、なんとその会社で出会ったのはあのアリーシャだったのです。

ウダイとプリヤンカの夢のような悪夢のような共演を楽しみにして観てみました。物語が始まりダサダサな格好で現れたウダイの姿が既に泣かせます。なにもそんなに自虐的にしなくたっていいじゃないかウダイ…でもそんなけなげなウダイになぜか萌える…。そんなウダイが「不可能な恋」をしたのがプリヤンカ。この作品でもプリヤンカさん可愛いです。美しいです。こんな全く釣り合わない、というかあまり釣り合ってほしくない恋のドタバタがこれから始まるのか、と思ってたらあっという間に大学のシーンは終わってなんと7年後というからびっくりです。うーん、こんな美人が7年も独り身でいるわけないじゃん…。

これから待つであろうウダイの絶望的な運命を固唾を呑んで見守っていたら、なんとプリヤンカはバツイチ子持ちになってたんです!この辺の微妙にリアルな設定がいい。プリヤンカはウダイの顔を覚えていなくて、そしてひょんなことからウダイはプリヤンカの娘の子守りとして彼女の家に通うことになってしまいます。そして徐々に二人の仲は接近するように見えて、そこにライバル登場!なんとそのライバルというのがウダイからソフトウェアを奪ったにっくき投資家!こうして物語は恋のライバル撃退と奪われたソフト奪還、さらに自分の正体を明かせないウダイの恋の行方が絡み合いながら動いてゆくんですね。

ブサメンとかキモメンとかオタク野郎とかイケテないとかダサダサとか酷い言いかたしましたが、中盤からのウダイ、実はなかなかキュートなんですよ。冴えないとはいえ優しげで繊細、前に出るタイプではないにせよ思いやりに満ちてるんです。インド映画じゃマッチョでイケメンの男優ばかり見せられるので、こんなキャラクターが意外と新鮮なんですよ。男は顔じゃない、優しさなんだ…もうこの辺で観ているオレなんかウダイに感情移入しまくりですよ!だいたい考えてみればオレだってブサメンオタク野郎じゃないか!そうか、オレはウダイだったんだ!それが分かった瞬間にオレもうこの映画にハマリまくりですよ!ウダイがプリヤンカを見つめるとき、オレもまたプリヤンカを見つめ、ウダイがプリヤンカへの愛に悩むとき、オレもまたプリヤンカへの愛に悩んでいました!ああ!プリヤンカ!

作品的に見るなら、ライトで小奇麗にまとまり過ぎているきらいがあり、インド映画臭があまりしないといった部分こそあるにせよ、むしろハリウッドや日本のラブコメを観るぐらいのつもりで観れば問題ないんじゃないですかね。そもそもウダイのキャラクター自体が壮絶にインド臭させてますから、いい具合に中和されてるんじゃないでしょうか。そんなわけでこの『Pyaar Impossible!』、自分はたいそう面白く観ることが出来ましたね。