インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

これが真のスィンガムだッ!!タミル語版『Singam』観たぜ!ガオーーッ!!(高血圧気味に)

■Singam (監督:ハリ 2010年インド映画)


アジャイ・ディーヴガン主演、ローヒト・シェッティ監督によるインスペクター・スィンガムを主人公としたマサラアクション・ムービー『Singham』(2011)とその続編『Singham Returns』(2014)はその笑っちゃうようなド派手かつ超絶的なアクションでお気に入りのインド映画シリーズのひとつなのですが、実はこの『Singham』はタミル語映画『Singam』(2010)のヒンドゥー語版リメイクなんですね。タミル語版はタイトルの真ん中に「h」が入ってないんです。ストーリーはだいたい同じなんですが、キャスト・スタッフは全くの別物です。
こういったタミル語映画からヒンドゥー語映画へのリメイクはとても多いのですが、自分は今までそれらの作品のヒンドゥー語版リメイクしか観ていなかったので、一度『Singam』を通してオリジナルに触れてみようと思い、この『Singam』と続編である『SingamII(正確にはヒンドゥー語吹き替えの『Main Hoon Suruya Singham 2』)』を観てみることにしました(こちらの感想は次回)。ハリ監督によるタミル語版オリジナル『Singam』はスーリヤ主演、ヒロインはアヌシュカ・シェッティ。そして悪党役をヒンドゥー語リメイクと同じプラカーシュ・ラージが演じています。
《物語》タミルの小さな村に勤務する警官スィンガム(スーリヤ)は正義を愛し信義に篤い男として村人たちから慕われていた。この日もスィンガムはならず者たちを超絶殺法でギタギタにのし、村の平和を守っていた。そんなスィンガムは村に親戚を訪ねに来たカーヴィヤ(アヌシュカ・シェッティ)という女性と知り合い、いつしか二人は愛し合うようになる。その村にある日、チェンナイを巣窟とするマフィアのボス、マイルワーガナム(プラカーシュ・ラージ)とその一味がやってくる。スィンガムはマイルワーガナムをハエの糞程度に扱って村から追い出すが、恨みを抱いたマイルワーガナムは裏から手を回し、スィンガムを自らの縄張りであるチェンナイの警察署に配属させ、そこでスィンガムに徹底的な嫌がらせを開始する。しかーし!そんなことに黙っているスィンガムであるはずが無かった!!
血圧高い。血圧高い。血圧高い!オリジナル版『Singam』は怒涛のように繰り出される展開と、主演であるスーリヤの常時目ん玉ひん剥き血管ブチキレまくった演技により、あたかも映画それ自体がハリケーンのごとく全てをなぎ倒し凄まじい勢いで進んでゆきます。テルグ映画の濃厚さとてんこ盛り具合は何作か観て心得ていたつもりですが、この作品もあり得ないようなテンションで2時間半余りを突っ走ってゆくんです。なにしろスィンガムが怒り狂いアクションを繰り出す時の特殊効果が笑っちゃうほど素敵。「ガオーッ!」というライオンの吠え声と共に、そのライオンの姿が飛び掛かるスィンガムにオーバーラップされます。スィンガムの得意技「スィンガム・ビンタ」が炸裂する瞬間にはスィンガムの掌がビガーン!と輝くんです!
オリジナル版『Singam』はリメイク作とほぼ同じような物語と展開を見せます。違うところといえばまずリメイク作はアクションがより技巧的で派手、オリジナルはひたすらプリミティブ。また、リメイクではスィンガムが全編素手による鉄拳制裁を基本としていたのに対し、オリジナルでは後半、悪漢たちが根城とする村に潜入し、激しい銃撃戦を展開する、という部分がとても新鮮でした。リメイクでは悪玉の嫌がらせや警察上層部の締め付けで窮地に至るスィンガムが描かれますが、オリジナルのスィンガムはそんなことなど屁とも思わず徹底抗戦を仕掛けます。オリジナル版スィンガムは全く弱点を見せない無敵な存在なんです。それと、オリジナル版ではエリマライ巡査長(ヴィヴェーク)というコメディリリーフの存在があり、いつも一人でなーんだか変なことばかりやっています。

(↑ファンメイドっぽいですがこういう雰囲気であると察してください)