インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

カバディ選手が悪漢から美女を救っちゃうアクション・ムービー『Tevar』

■Tevar (監督:アミト・ラヴィンデールナート・シャルマー 2015年インド映画)


2014年公開のインド映画話題作はほぼ観終わり、いよいよ2015年公開作に突入であります。この『Tevar』は2015年1月に公開されたアクション映画。お話は体力自慢で暴れん坊の主人公が悪漢に追われる美女を助けて…という王道的なドラマ。主演を『Gunday』『2 States』『Finding Fanny』と話題作に総出演しているアルジュン・カプール。今作でも「湘南爆走族」っぽいヘアスタイルが決まってます。そしてヒロインがソーナークシー・シンハー。これまでサルマーン・カーン、アクシャイ・クマール、アジャイ・デーヴガンとアクション映画で共演してきた彼女ですが、やはり【暴れん坊キャラのガールフレンド】といえばこの人しかいない!?

《物語》体力自慢の主人公ピントゥー(アルジュン・カプール)はカバディの花形選手で、おまけに正義を愛する熱血漢。そんな彼の運命は悪漢に追われる女性を助けたことから大きく変わっていきます。彼女の名はラディカー(ソーナークシー・シンハー)といい、強引に交際を迫るガジェンドラ・シン(マノージュ・バージパーイー)というチンピラに追われていたのです。しかもガジェンドラは町の有力者の弟で、警官たちはラディカーの窮状を見て見ぬふりでした。彼女を助けられるのは自分しかいない!こうしてピントゥーは次々に襲いかかる危機を乗り越えようと活躍します。

アクション映画の定番的な展開を見せるこの作品、そういった定番こそが安心して観られる要因ではありますが、では定番すぎて新鮮味はないのかというと個人的には幾つかの部分で新鮮さを感じました。

まずひとつは主人公ピントゥーがプレイするスポーツ、カバディなんですよ。インドの国技というのは聞いたことがありますが、実際どんなものなのかまるで知らなかったし、これまで自分が観たインド映画でも、カバディが登場した作品って無かったんですよね。観たことが無いだけでカバディの描かれる作品はあるのでしょうが。この『Tevar』でも冒頭でちょっと描かれるだけで、それがどんなルールでどのようにして勝敗を決めるものなのかは分かりませんでしたが、少なくとも「カバディカバディ!」と掛け声を上げながらのプレイは見られたのでちょっとだけ満足できました。

そしてもうひとつは、作品の中で悪党相手に大立ち回りを演じるピントゥーのその鉄腕ぶりの理由が、カバディ選手だからという理由で説明できている部分なんですね。インドのアクション映画に登場する主人公は誰もがとてつもなく強く、それは超人か鬼神かと思ってしまうほどなのですが、ではなぜそんなに強いのか、という説明は特にされないんですよね。それはもう、主人公だから最強なんだ!という決まり事みたいな感じなんですよ。今でこそそんなインド・アクションを楽しく見られますが、最初はその説明の無さに若干面喰ってはいたんですね。しかしこの『Tevar』にはスポーツ選手という説明があり、だから強力であるということと、しかし無敵ではないという描かれ方をしており、そこからハラハラドキドキ感が生まれてくるんですよ。まあ最後には無敵になっちゃうんですけどね!

もうひとつ新鮮だったのは、ピントゥーとヒロイン・ラディカーの間に、ぎりぎりまでロマンスが生まれない、という部分です。ピントゥーというのは本当に正義漢で、冒頭でも痴漢に絡まれる女性を助けたりしています。そんなピントゥーがラディカーを助けるのもやはり彼の真っ直ぐな心からで、ラディカーが美人だからとか惚れているからといった理由ではないんですね。自分のために傷だらけになりながら戦うピントゥーにラディカーは次第に想いを寄せますが、ピントゥーにあるのは正義を貫くことだけなんです。そして、助けたラディカーを最終的に空港に送り届ける、という使命を持っています。つまり二人で逃避行ではなく、飛行機に乗ってしまえば二人は別れる運命なんです。そんな中で二人のロマンスはどう花開くのかが見所にもなるんですね。こんな具合に、定番的な展開の中に幾つかの新鮮さが加味された良作でしたね。