インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等あったらご容赦ください。

スーパースター・ラジニカーントがダム建設を巡る陰謀と戦う映画『Lingaa』

■Lingaa (監督:K.S.ラヴィクマール 2014年インド映画)


あのスーパースター・ラジニカーントがスクリーンに帰ってきた!という2014年の映画『Lingaa』です。実はラジニカーント、大傑作映画『ロボット』(2010)のあとしばらく病気療養中だったらしいんですね。途中『Kochadaiiyaan』(2014)という3DCG映画で主役のモーションキャプチャーを演じていましたが、やはりあれはアニメ。という訳で今回は久々の主演作ということになるんですよ。お話はダム建設を巡る悪巧みにラジニカーントが喝を入れる!というもの。共演はダブル・ヒロインとしてアヌシュカー・シェッティ、ソーナークシー・シンハー。監督はかつてラジニカーントとタッグを組んだ『ムトゥ 踊るマハラジャ』で世界を席巻したK.S.ラヴィクマール、音楽はA.R.ラフマーン。

《物語》コソ泥として生きるリンガ(ラジニカーント)はある宝石強盗をきっかけに女性テレビレポーターのラクシュミ(アヌシュカー・シェッティ)と知り合います。実はラクシュミには故郷の村へリンガを連れ戻す役目がありました。なんとリンガはかつてこの村で君主だった男の子孫だったのです。英領インド帝国時代、ラージャ(ラジニカーント二役)という名のこの君主は、旱魃と河川の氾濫に苦しめられるこの村の窮状を知り、村人たちと協力してダムを築こうとします。明るい村娘ブハラティ(ソーナークシー・シンハー)の協力もあり、ダムは完成に近づいていましたが、イギリス官僚の陰湿な妨害工作に遭い、ラージャは窮地に落とされるのです。

ところでこの『Lingaa』、タミル語映画なんですが、自分はヒンディー語吹き替えバージョンのDVDを観たんです。ところがこのバージョンは大幅にカットされたものなんですね。タミル語版178分の所をヒンディー語吹き替え版は142分となっており、つまり36分に渡ってカットされたヴァージョンだということなんですよ(オリジナルのタミル語版のソフトが出てるのかどうかは未確認)。そんなわけですから、ここで書いた感想はあくまでヒンディー・バージョンを観ての感想となりますのでご了承を。

とは言いつつね…。う〜ん、これがなんだか退屈なんですよ。ダム再建設を巡る陰謀と戦う現代のラジニカーント、そして英領時代のダム建設を目指して尽力するラジカーント、と二つの時代・二つの主役を演じて頑張っちゃうラジニカーントなんですが、踊りもアクションもギャグもありつつ、なんだか全体的にスッカスカなんです。なんかこうラジニカーント映画のたっぷりこってり振りがコンソメスープみたいな薄味になっちゃってる。いくら短縮バージョンとはいえ、短縮してさえスッカスカなんですからオリジナルのほうもなんだか危ぶまれます。病気療養後の体力だったからアッサリ行っちゃうことにしたんですかね。

薄味とはいえ、前半のコソ泥稼業の描写はそんなに悪くないんです。ただやはり後半からの英領時代が問題なんですよ。最初は走行中の機関車を舞台にした大立ち回りや、豪華絢爛なマハラジャの邸宅を御開陳して目を楽しませてくれるのですが、ダム建設にお話が進んだ途端、ラジニ演じるラージャの理想に突き進む清廉潔白さがなんだか品行方正過ぎて面白くないんです。人々を動かし大きな事業を打ち立てるラジニの姿は『その男シヴァージ』などでも見られ、ラジニの政治寄りな部分が垣間見られますが、あれはあくまで悪党が善行を成すのが楽しかった。でもこの『Lingaa』では人々に愛される領主様がテキパキと辣腕を振るう場面ばかり見せられて退屈なんです。

そして後半に近づくにつれ、その清廉潔白な領主様は、今度は聖人になっちゃうんですよ!村人のために全ての財を投げ打ち無一文になりながらも笑顔を絶やさず、そんな領主様を村人たちが泣きながら拝む、ああ、神様仏様ラジニ様、ってな感じなんですよ。まあ確かにラジニはスーパースターですから、「俺って凄いよね?俺ってイケてるよね?」と超絶アピールしてナンボではあるんですけれども、その凄さを裏打ちするたっぷりこってり黒光りしたパワフルさがあってこそ初めて面白さに通じていたものを、今回のラジニは単に「善人」なだけなんですね。こりゃ面白くないわなあ。

クライマックスギリギリでやっと大アクションを披露してなんとか溜飲を下げましたが、ラジニの映画って本来全編クライマックスじゃないですか。それをラストあたりだけでチャチャッと片付けちゃう部分にもやはり物足りなさを感じるんですよね。劇中何度か使用される『Kochadaiiyaan』と五十歩百歩のしょぼいCGも十分に萎えさせてくれる一因になってしまいました。まあこれがその辺の俳優の作品だったら「まあ普通かな、悪くないけど」になるんですが、ラジニだとやっぱり期待しちゃうじゃないですかー。なんかこう、美味いインド料理屋と聞いて出掛けたらCoCo壱番屋にお店が変わってた、というぐらいにがっかりした作品だったなあ。
しかしラジニって地獄のミサワに似てね?


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