インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

二人は泥棒カップル!?~映画『Bunty Aur Babli』

Bunty Aur Babli (監督:シャード・アリー・セヘガル 2005年インド映画)


ひなびた田舎を飛び出して、都会で夢を掴みたい!と家を出てきた男女が、現実の厳しさに嫌気が差し、ついには大泥棒になっちゃう!?というコメディです。主演男女バンティーとバブリーを演じるのはアビシェーク・バッチャンとラーニー・ムカルジー。そして指名手配犯となったこの二人を追うオッカナイ警察官役をアミターブ・バッチャンが演じており、つまりアミターブ&アビシェークのバッチャン親子対決が観られる!というのも見所であります。それとアイシュワリヤー・ラーイがアイテム・ガールとして登場するのも嬉しいですね。

インドの地方都市に住むラーケーシュ(アビシェーク・バッチャン)は退屈な田舎を飛び出し都会で一攫千金を掴みたいと思っていました。彼は親にも告げず家を飛び出しますが、待っていたのは厳しい現実。一方、やはり地方都市出身のヴィンミー(ラーニー・ムカルジー)も都会でトップモデルになり注目を浴びたい、と考えていましたが、やはり現実の厳しさに項垂れていました。そんな二人が出会い意気投合し、とりあえず都会に行くため出来心で詐欺を働きますが、これがうまくいっちゃったものだから味を占め、二人は図に乗ってどんどんと荒っぽく詐欺泥棒を働くようになり、いつしか「バンティーとバブリー」という大泥棒として名を馳せてしまいます。しかしそんな二人を敏腕刑事ダシュラト(アミターブ・バッチャン)が執拗に追跡し始めたのです。

いわゆるピカレスク・ロマンと呼ばれるジャンルのお話になるでしょうが、シリアスな犯罪ものでは決して無く、むしろ主演の大泥棒、バンティーとバブリーのお気楽で罪悪感ゼロの泥棒ぶりを面白おかしく、時にはロマンチックに描くコメディになっています。二人が変装したり声色を使ったりして相手を出し抜き泥棒を働くさまがコミカルに描かれ、その手口の巧妙さ・馬鹿馬鹿しさを楽しむといった流れが前半のメインでしょう。そしていつしか心を通わせ合う二人の恋愛要素もなかなかに情感豊かで、2005年製作のインド映画にしては結構際どく描かれていたように思いました。ここでバブリーを演じるラーニー・ムカルジーさん、自分はSRKの傑作映画『Veer-Zaara』でしか知らなかったんですが、この『Bunty Aur Babli』ではちょっと口煩いけど活発で表情豊かな少女を演じ、なかなか可愛らしい女優さんでしたね。

しかし悪いことは出来ません。そんな二人をとってもコワ~イ刑事のダシュラトが蛇のようにしつこく追跡し始めるんです。ダシュラト演じるアミターブ・バッチャンのドスの利いた凄みったらありません。ここは流石アミターブ・バッチャン、年季の入った黒光りする威圧感で周囲を常に震え上がらせます。アミターブ・バッチャンの出演映画って実は前述の『Veer-Zaara』でしか観たことが無かったんですが、やっぱり迫力あるよなあ。そしてインド映画といえば基本は勧善懲悪、泥棒二人がいくら悪意なく描かれたとしても、やっぱり悪事は悪事、最後に待つであろう運命を想像しちゃうとついつい固唾を飲んで映画を見守ってしまうんですね。後半では泥棒二人と刑事ダシュラトとの追跡劇が盛り込まれ、一気に緊張感を孕んだストーリーとして進んでゆくんです。さてさて泥棒カップルの運命やいかに!?というハラハラドキドキの娯楽作として盛り上がっておりましたね。