インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

インド諜報部員vs爆弾テロ集団の熾烈なる戦い~映画『Holiday - A Soldier Is Never Off Duty』

Holiday - A Soldier Is Never Off Duty (監督:A・R・ムルガードース 2014年インド映画)



休暇中のインド軍兵士が、偶然捕えた爆弾テロ犯人から大規模テロの情報を探り出し、それを阻止するために命を懸けた戦いに赴くという物語です。主演は『Special 26』『Rowdy Rathore』のアクシャイ・クマール、ヒロインを『Dabangg』『R...Rajkumar』のソーナークシー・シンハーが演じています。

インド陸軍大尉のヴィラート(アクシャイ・クマール)は休暇を家族と過ごすためにムンバイに帰ってきていました。しかし到着早々家族にお見合いに連れて行かれ、そこで古風なインド女性サイバ(ソーナークシー・シンハー)と出会います。好みじゃない、と一度は断るヴィラートでしたが、サイバの見た目とは裏腹なスポーツ・ウーマンぶりに惚れ込み、結局結婚を決めることになります。そんなある日、ヴィラートはバスの爆弾テロ犯を捕えますが、何かあると睨んだヴィラートは犯人を監禁・尋問します。実はヴィラートは極秘の諜報部員でもあったのです。尋問からヴィラートは背後に巨大なテロ組織が存在していること、ムンバイ市内12箇所を狙った大規模テロが行われようとしていることを知るのです。そして仲間を招集したヴィラートは、テロ組織壊滅のために非情なる作戦を開始します。

この『Holiday』、最初見たポスターが軍服姿のアクシャイと白いワンピース姿の可憐なソーナークシーの姿が使われていて、「ちょっとアクション入ったラブコメ映画かな?」と思ってたんですが、DVD化されたそのジャケットが、グレイを基調とした幾分暗めのものになっていたため、「え?ラブコメなの?シリアスなの?」とちょっと戸惑っていました。そして実際観てみると、やっぱりどっちつかずの印象だったんですよ。物語に様々な要素を詰め込み、幕の内弁当状態のエンターテインメント作品として楽しませるというのはインド映画では常套手段なんですが、この作品に関してはそれが裏目に出たのか、アクシャイとソーナークシーのキャッキャウフフ場面と、熾烈なテロ阻止作戦、といった展開がどうもそりが合わず、片方が片方の足を引っ張る形で緊張感を削いでしまっているんですよ。

それと古典的なインド美人であるソーナークシーが、「実はマッチョなスポーツ・ウーマン」という設定のため、男性的な編み込みヘア姿でボクシングしてみたりラグビーしてみたりと頑張ってくれてはいるんですが、これが申し訳ないんだけど全然似合わなくて、逆に普段のお嬢様姿に戻ったときはほっとしたぐらいです。しかもこの設定、ちょっと目先の変わったことをやりたかっただけみたいで、「マッチョなスポーツ・ウーマン」であることが物語に生かされたりするわけではないんですね。オレは後半アクシャイと共闘して鬼神のごとく暴れまわるソーナークシーを期待してたんだけどなあ。一方アクシャイはいつも通りぬぼーっとしつつ、所々で派手なアクションをキメてくれていて、これはこれで悪くはないんですが、これがもっと精悍な男優だったら映画の印象も変わったんじゃないかなあ、と思ってしまいました。

とはいえ、「拷問も辞さない冷徹な諜報員vs無差別殺戮を繰り返す凶悪なテロ集団」という血なまぐさい図式は十分物語を盛り上げており、中盤からは壊滅作戦とそれに対する報復の応酬がこれでもかと繰り返され、いよいよ主人公を絶体絶命まで追い込んでゆくクライマックスまでそのバイオレンス描写はどんどんエスカレートしてゆきます。監督のA・R・ムルガードースは2008年にもアーミル・カーン主演の『Ghajini』で、やはり徹底的なバイオレンスを描きその凄みを見せつけましたが、この作品でもそういったアクションでは見どころがありました。また、軍人が主人公ということから、傷痍軍人や軍人の家族にもスポットを当て、彼らの功績やその内助を称賛するシーンが幾つか盛り込まれ、これまで自分があまり映画で観たことのないインドの別の側面を垣間みることができました。

http://www.youtube.com/watch?v=oZ3r-m7RH_8:movie:W620