インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

腐った世の中はこのラジニカーント様が変えてやるぜ!~映画『ボス その男シヴァージ』

ボス その男シヴァージ (監督: シャンカール 2007年インド映画)


最近割とインド映画を観る機会が増えてきたのですが、そういえば何かを忘れているような気がして暫く「んー…」と考えていたんですよね。そして大変なことに気付きました。
<span class="deco" style="font-weight:bold;color:#FF0000;">スーパースター・ラジニカーント様の映画を忘れちゃいないか。</span>
いえ、『ロボット』はきちんと観てるんですがラジニカーント様の映画というよりは「インドに変わったSFX映画があるらしい」という興味から観たまでだし、『ムトゥ 踊るマハラジャ』も話題になっていた頃に観たことは観たけれど遥か昔で記憶は遠く霧の中…。というわけで選んだのが2007年製作で日本でも公開された『ボス その男シヴァージ』。あの『ロボット』と同じ監督、さらに同じスタッフとキャストで作られているそうです。

物語の主人公は米国で一儲けしてインド・チェンナイに帰ってきた大資産家シヴァージ(ラジニカーント様)。彼は潤沢な資産を運用し、貧困層向けの無料病院や入学費無料の大学を建てようと夢見ていました。しかしそんなシヴァージのことを面白く思っていないのが地元を支配する悪徳経営者アディセーシャン。シヴァージの福祉など自分の既得権益の邪魔だとばかり、あらゆる役所に手をまわしてシヴァージの施設建設を邪魔します。真っ当な手続きで仕事を成したかったシヴァージは泣く泣く賄賂を使って許可を取りますが、アディセーシャンはさらに強硬な手段を取り、なんとシヴァージは無一文になってしまいます。「お前は乞食がお似合いだぜ?」哄笑を浮かべながら見下すアディセーシャンに、遂にシヴァージの怒りが爆発!「ワルにはワルで対抗するしかない!」そう心に決めたシヴァージは裏社会のボスとなり、アディセーシャンを叩き潰しにかかるのです!やれ!やったれシヴァージ!悪い奴らをいてこましたれ!!

『ロボット』はラジニカーント様の濃いいキャラよりもありえない着想とロボット主人公ならではの無茶振りしまくったアクションで楽しませてくれていた部分がありましたが、この『シヴァージ』ではもう全篇が徹頭徹尾ラジニカーント様の<span class="deco" style="font-weight:bold;">「俺色」</span>に染まりまくった堂々<span class="deco" style="font-weight:bold;">「大ラジニカーント様祭り」</span>として完成しております(ラジニカーント様の映画3本くらいしか観てないのに知った口をきくオレ)。恋あり笑いありアクションあり、そして歌あり踊りありと、インド映画の王道を行く展開なのですが、ラジニカーント様の出演により、さらにそれがたっぷりこってりスパイス山盛り、<span class="deco" style="font-weight:bold;">ゼンブマシマシチョモランマ状態</span>となって観客の前にそびえ立っているわけなのでございますな!「濃いい」とか「王道」とか申しますが、このテンションとクオリティで上映時間の185分間、全く飽きさせないばかりかひたすらとことん楽しい時間をキープし続ける、という部分で凄まじいほどの映画力を持った作品なのでありますよ。

そしてこの作品をぐっと前のめりで観せてしまう最大の要素は、善意の人シヴァージの大いなる挫折とその復讐が物語のテーマとなっている部分でしょう。自らの全ての財を投げ打ち、多くの人に善きことを成そうと粉骨砕身しながらも、金と権力にしか興味の無いよこしまな男の企みにより、その全ての希望をずたずたに引き裂かれ、さらに嘲られ見下される、この血を吐くような怒りと口惜しさが、<span class="deco" style="font-weight:bold;">観る者の魂に紅蓮の如き炎を焚き付けるのですよ!</span>希望に燃えながらも持てるもの全てを失い、落ちるところまで落ちたシヴァージ、ここまでが前半の展開となります。しかーし!シヴァージは絶望するそぶりさえ見せず、すぐさま次の一手に出るのです。それが「悪へは悪で」の戦法です。世の中を善くしたいならなりふり構っちゃいられない、どんな汚い手を使ったって最大の巨悪を倒す!とシヴァージは誓うんです。このひたむきさ、意志の強固さ、決して諦めない粘り強さ、<span class="deco" style="font-weight:bold;">こんなシヴァージのキャラクターが、観る者を魅了して止まないのですよ。</span>決して変なオッサンってだけじゃないんだからね!

シヴァージが戦うのは悪徳経営者アディセーシャンだけではありません。汚職収賄に塗れた政府役人たちの鼻をあかし、さらにインド各地で裏金を蓄える悪徳資産家たちに鉄槌を下し、彼らの汚れた金を収奪、それを洗浄して国中に学校や福祉施設を建てまくりはじめるのです。そしてそれを、あてにならない国家や法律に頼ることなく、個人の超法規的手段、平たく言うと「ゲンコツによる暴力」で行ってしまうのです。「一人のヒーローが世直しをする」という、フィクションだから可能だけれどもどこか能天気な絵空事に見えなくもないこの物語、実はよく考えると「国家を超えた"法"を元に力付くで社会改革を行ってしまう行為」、<span class="deco" style="font-weight:bold;color:#FF0000;">要するに【革命】についての物語を描いてしまっているのですよ。</span>そう、映画『ボス その男シヴァージ』は、スーパースター・ラジニカーントが、愉快痛快なアクションを通して、単なる娯楽にとどまらないアナーキーな寓話を描く作品だったのですよ!
http://www.youtube.com/watch?v=qFPhHJTf61M:movie:W620

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