インド映画を巡る冒険(仮)

以前メインのブログに書いたインド映画記事のアーカイヴです。当時書いたまま直さず転載しておりますので、誤記等ありましてもご容赦ください。

映画『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』はマジカル・ミラクル・ミステリー・ツアーだった!?

■クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅 (監督:ケン・スコット 2018年フランス・アメリカ・ベルギー・シンガポール・インド映画)

f:id:globalhead:20190616084315j:plain

今日紹介するのは2018年製作でつい最近日本でも公開された『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』という作品です。なんだか変わったタイトルですね。いったいなぜ「僕」は「クローゼットに閉じ込められ」、いったいどんな「奇想天外な旅」をすることになったのでしょう?

物語はインドのムンバイから始まります。この街で暮らす貧しい青年アジャは母の死をきっかけに、生前母が旅を夢見ていたパリへ行くことを決意します。そのパリでアジャはマリーという女性と出会い再会を約束します。無一文の彼は閉店後の家具店に忍び込みクローゼットの中で眠りますが、なんとこのクローゼット、深夜のうちにアジャを閉じ込めたままイギリスへと出荷されてしまうのです。当然イギリスで彼は入国拒否され、あろうことか今度はスペインに飛ばされます!さらに様々な偶然が重なり、彼は世界各地を転々とする事に!果たしてアジャはマリーと再び出会うことができるのか!?

主人公アジャを演じるのはインドの人気俳優ダヌシュ。日本では馴染みが薄いですが本国では40本以上の作品に出演しており、自分も『Raanjhanaa』1作だけ観たことがあります。共演として『アーティスト』『グッバイ・ゴダール!』のベレニス・ベジョ、『エイリアン・バスターズ』『はじまりの旅』のエリン・モリアーティ、『キャプテン・フィリップス』『ブレードランナー2049』出演の個性的なソマリア人俳優バーカッド・アブディ。監督は『人生、ブラボー!』『ビジネス・ウォーズ』のケン・スコット。

さてさて、インドからフランスへと出発した主人公アジャですが、不運と偶然が重なりイギリスへ、スペインへとたらいまわしにされた挙句、さらにはイタリア、そしてアフリカのリビアにまで転々とする事になっちゃうんですね。本当にもう「なんでこうなっちゃうんだ!?」という事の連続で、これぞまさに「奇想天外な旅」たる所以なんですよ。この思いもよらぬ旅を生み出させてしまう偶然の在り方が実にマジカルであり、さらにこれらの旅で起こる様々な事がひとつに結びついてゆく様は実にミラクルなんです。

これらの旅の遍歴から次々と驚きと楽しさが生み出されてゆき、さらに先の読めない展開は「主人公、いったいどうなっちゃうの!?」と全く目が離せません。そしてアジャが訪れる様々な国での千差万別な文化、習俗、そこで生活する人々との忘れられない出会いとが、この物語を百花揺籃なカラフルさに染め上げます。映画のジャンル分けでいうなら、この作品はある種のファンタジーだということもできるかもしれません。しかし、ファンタジーでありつつ、物語ではヨーロッパを悩ます移民問題、さらにアフリカを覆う難民問題が提起され、しっかりと現実世界に足が付いているのですよ。

とはいえ、様々な「奇想天外な旅」を描くこの物語の根幹にあるのは、「パリで出会った女性となんとしてでももう一度会いたい」というロマンス要素であり、さらに「パリに憧れながら亡くなった母の、その隠された理由と、主人公の出生の秘密」という、主人公のアイデンティティに関わるものであったりするんです。こうしたドラマの在り方が物語を重層的で、しかも非常に感慨深いものにしているんですね。もうオレなんかは「こういう映画を観たかったんだ!」と思ったし、「これこそが映画じゃんか!」とすら思わされました。こりゃもう今年のベストの1作と言ってもいいんじゃないかなあ?

非常に屋台骨のしっかりしたこの作品、なんだか良質な小説を読んでいるような気分だな、と思ってたらやはり原作があり、それはロマン・プエルトラスの『IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅』という作品ですね。実はこの原作者、映画にもいい感じの役柄でちょこっと登場します。というわけで映画『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』、本当に楽しく、そして素敵さがいっぱいに詰まった作品なので、是非皆さんにお勧めしたいですね!あ、インド映画ぽい歌と踊りのシーンもあるよ!


『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』予告編

IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅 (小学館文庫)

IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅 (小学館文庫)

 

21人vs1万人の戦い/映画『KESARI/ケサリ 21人の勇者たち』

KESARI/ケサリ 21人の勇者たち (監督:アヌラーク・シン 2019年インド映画)

f:id:globalhead:20190817073216j:plain

19世紀末、当時の英領インドとアフガニスタンの国境にあったサラガリ砦は通信中継地点として21人のインド人シク教徒が駐留しているのみの小さな砦だった。しかし、列強支配を快く思わないアフガン族部族連合は国境侵攻を画策、まず第一の標的としてこのサラガリ砦制圧を目論んだ。その数は1万人。1897年9月12日午前9時、こうして21人vs1万人の絶望的な戦いが幕を切ったのである。

今年インドで公開され大ヒットした歴史大作『ケサリ 21人の勇者たち』は史実に残る熾烈な戦闘に脚色を施し製作された作品だ。「ケサリ」とはサフランサフラン色のことを指し、これは「勇気と犠牲」を意味するものとされ、インド国旗にも使用されている。物語は武勇の誉れ高いシク教徒たちが「ケサリ/勇気と犠牲」の信念のもと、死を賭けた戦いを繰り広げる様が描かれてゆく。

主演は『パッドマン 5億人の女性を救った男』、さらに日本公開が待たれる超大作『ロボット2.0』のアクシャイ・クマール。主人公の妻役として『僕の可愛いビンドゥ』『Hasee Toh Phasee』のパリニーティ・チョープラー。監督はパンジャーブ語映画のヒットメーカー、アヌラーグ・シン。また、アクションスタッフとして『マッドマックス  怒りのデス・ロード』のローレンス・ウッドワードが参加している。

冒頭から巧いシナリオだと思わされた。命を奪われそうになったパシュトゥーン人の女をイギリス人上官の命令を無視してまで助けようとする主人公イシャル・シンの姿を通し、彼の気高さと真正さ、そして勇猛さに溢れた性格をまず印象付ける。同時に、彼の仲間であるシク教徒たちの、規律正しさと同胞愛もまた描く。

そんなイシャル・シンを見下し罵倒する英国人の姿から彼らの傲岸さと、彼らに隷属しなければならないイシャル・シンやシク教徒たちの苦々しい立場も明らかになる。そして怒りを堪え耐え忍ぶイシャル・シンの表情から、彼の高いプライドが見え隠れする。さらに時折イシャル・シンの妻の姿が妄想となって彼に語り掛け、彼の家族愛の深さを知らしめることになる。これらが冒頭30分程度で全て説明されるのだ。

この物語のポイントとなるのは、主人公を始めとするサラガリ砦の兵士たちがシク教徒である、という部分だ。シク教徒はターバンに髭というインド人のステレオタイプの元になった者たちだが、実際はインド人口の1.7%に過ぎない。そんな彼らがなぜインド人ステレオタイプとして目されたかというと、その有能さから兵士として買われ、幾つものシク教徒連隊が作られ英領に派兵され、それが他の国で目にしやすいインド人であったということからのようだ。シク教徒は勤勉で勇敢で自己犠牲の強い者たちであるという事なのだ。そしてこの勇敢さが、たった21人で1万人の軍勢に対峙した最大の理由なのだ。

さて登場人物や時代的背景の説明が終わった頃に、いよいよシク教徒12人対アフガン族部族連合1万人の戦いへとなだれ込んでゆく。早い段階で他の砦からの援軍はほぼ不可能、ということも分かっている。文字通り孤立無援という訳だ。そしてここからラストまで、血で血を洗う凄まじい戦闘が延々と続くことになるのだ。

孤立無援の籠城戦ということでは「アラモの戦い」を思わせ、圧倒的に多勢に無勢の戦闘という事では300人のスパルタ兵士が100万人のペルシア軍勢と戦いを繰り広げる映画『300《スリーハンドレッド》』の元となった「テルモピュライの戦い」を思い起こさせることだろう。倒しても倒しても雲霞の如く湧き上がり迫りくる敵の姿からはゾンビ映画すら連想させられるが、いつ終わるとも知れない徒労に満ちた戦いの有様からは『ブラックホーク・ダウン』や『13時間 ベンガジの秘密の兵士』といった秀作戦争映画を彷彿させる作品でもある。

後半からの戦闘シーンは若干単調になる部分こそあるが、インド映画独特のエモーショナルな描写を交えることによって飽きさせない工夫がなされ、先に挙げた戦争映画にひけをとることのない非情さと迫真性に満ちた作品として仕上がっている。そしてなによりこの映画の中心的なテーマとなるのは「プライド」ということだろう。それはシク教徒としてのプライドということである。確かに、死を賭けてまで守らなければならないプライドなど度を越していると思えてしまうし、死や戦争それ自体を美化してしまう危険性もある。おまけにこの戦闘は”国を守る””愛する者を守る”などといった戦いですらないのだ。

しかしこの戦いの本当の矛先は、支配者である英国に向けられたものなのだろう。もはや英国を倒すすべはない。しかし被支配者であるシク教徒たちは、それに決して甘んじている訳ではない。ここで彼らが示した矜持は、いかに支配され蔑まれようとも、己の気高さと真正さは決して譲り渡してはいない、ということを誇示するためのものだったのではないか。彼らは、自らの中にある「尊厳」の為に戦ったとは言えはしないだろうか。

www.youtube.com

300 〈スリーハンドレッド〉 コンプリート・エクスペリエンス [Blu-ray]

300 〈スリーハンドレッド〉 コンプリート・エクスペリエンス [Blu-ray]

 

インド映画『シークレット・スーパースター』を観た

シークレット・スーパースター (監督:アドベイト・チャンダン 2017年インド映画)

f:id:globalhead:20190814185955j:plain

インド映画『シークレット・スーパースター』はシンガーになる夢を持つ少女とその夢を阻む暴力的な父親との確執を描く人間ドラマだ。粗筋はこんな感じ:

インド最大の音楽賞のステージで歌うことを夢見る14歳の少女インシアだったが、厳格な父親から現実味のない夢だと大反対され、歌うことを禁じられてしまう。それでも歌をあきらめられないインシアは、顔を隠して歌った動画をこっそりと動画サイトにアップ。ネットを通じて彼女の歌声は大人気を博す。やがてインシアは、落ち目の音楽プロデューサー、シャクティ・クマールと出会うこととなるが……。(映画.com) 

 主演のインシアに『ダンガル きっと、つよくなる』のザイラー・ワシーム、怪しい音楽プロデューサーに『きっと、うまくいく』『PK』『ダンガル きっと、つよくなる』のアーミル・カーン。さらにインシアの母親ナズマを『バジュランギおじさんと、小さな迷子』で主人公少女の母親役を演じたメヘル・ヴィジュ、父親役をアヌラーグ・カシャヴ監督の問題作『Black Friday』に出演したラージ・アルジュンが演じる。

この作品は幾つかの要素を含んでいる。それはまず「自分の夢を叶えたい」という少女の願いだ。もうひとつはそんな彼女の願いを「女のくせに」と一顧だにしない父親の無関心と無理解、その大元となる強烈な男尊女卑社会の在り方だ。そしてそんな中、娘の願いをなんとかして叶えてあげたいと祈る母親の愛だ。ここには現代的な価値観の中自分の未来をなんとしても掴み取ろうと奮戦する新しい世代と、旧弊な価値観に胡坐をかき己の男権的で強権的な支配の構造に疑問一つ抱かない古い世代との断絶がある。

インド映画に於いて一枚岩の様に頑固な父権社会と新しい考えを持つ若者との対立を描いた作品は幾つもある。それは『DDLJ』の如く結婚相手の父親の頑迷さであったり『家族の四季』のように強烈な父権支配の中における家族のドラマを描いた作品であったりする。しかし物語はたいてい父親と若者との和睦によって完結し、父権の否定やそれを乗り越える所には至らない。その中で例外的に『Udaan』(監督:ヴィクラマディティヤ・モトワーニー 2010年インド映画)のみ、徹底的に父親の否定を描くが、逆にこれ以外に父権の否定を描いたインド映画をオレは知らない(探せばあるんだろうが)。

とはいえこれらは(父親という)男と(息子という)男の、男と男の睨み合いを描いたものである。そしてその「息子という」男はいつか「父親という」男になるのだが、物語が和睦によって完結する以上批判は存在せず単なる現状維持の世代交代があるだけということになってしまう。男と男はなぜ和睦するのか。それは強固な家族制度を維持する為である。家族主義を基本とするインドでは解体した家族の孤独なぞ世界で最もおぞましいものであるのかもしれない。

しかしこれらの物語から零れ落ちているものがひとつある。それは「女」の存在である。

映画『シークレット・スーパースター』において、主人公少女インシアも、その母ナズマも、家長であるファルークによって、「女だから」というだけで全てを否定される。インシアは「女だから」自らの夢を追うことを許されず、長子として生まれなかったことを疎まれ、挙句に見知らぬ男と結婚させられそうになる。ナズマに至っては「女だから」どこまでもファルークへの従属を強いられ、ファルークの意思に反することをするなら徹底的な暴力が振るわれる。それは、「女だから」そのように扱っても構わない、という旧弊で頑迷な父権社会・男権社会の習わしだからだ。家父長制において女は男にかしずき隷属し常に男の意のままに生きなければならないからだ。

物語はこれら太古の恐竜の如く生き残る醜悪な父権制の中で否定され翻弄され続ける主人公が、どのように生きる希望を掴み取ってゆくのかが大きなテーマとなる。そしてその希望とは、シンガーになるという夢であり、その夢を叶えるための第一段階がYouTubeだった、というのがこの物語の面白いところだ。家族主義という「囲い込み」の中で不幸を背負った主人公が、インターネットという開いた世界で希望の切っ掛けを掴む。そこには自分を発見し認めてくれる者がいる、というだけではなく、家族主義というヒエラルキーから脱した、各々が等価な世界が広がっていたのだ。そこには新しい価値観があり、多くの出会いがある。そしてそのネット世界の中でインシアが出会ったのが、落ち目の音楽プロディーサー、シャクティ・クマールだったのである。

アーミル・カーン演じるシャクティ・クマールが登場し調子っぱずれの怪気炎を上げ始める所からこの映画は俄然ドライブが掛かり始める。「父権制の不条理」や「女性の虐待」といったシリアスな問題提起だけでは真摯でありつつもシビアな社会派ドラマで終わってしまったであろう部分を、アーミル・カーンの登場でいきなりファンタジックなエンターティメント作品に捻じ伏せてゆくのである。それだけアーミル演じるシャクティ・クマールは怪奇極まりない男なのだ。

実の所シャクティもまた傲岸不遜なマッチョ・キャラでしかない。トラブルメーカーである彼はある種の社会病理者であり社会不適合者であるとも言える。しかし音楽業界という魑魅魍魎の蠢く世界で、優れた才能と権勢を持って生きていたからこそ彼のイビツさは黙認されていたのだ。しかしあまり好き勝手やり過ぎて今や干される寸前だ。そんな彼が一発逆転を狙い発掘した才能がインシアだったのである。

シャクティのマッチョ・キャラはそれ自体が男権社会のカリカチュアでありパロディとも言える。しかしファルークが男権社会の負の部分を体現していたのに対し、シャクティは「下品だが頼りになるおっさん」という、しょーもないことはしょーもないが巧く活用すれば役に立つこともある「男の甲斐性」を見せてくれるのである。陰鬱なファルークの「父権制」に対して調子っぱずれなシャクティの「男の甲斐性」をぶつけることにより、「男権的なるもの」が「対消滅」を起こす、というのがこの物語の構造なのだ。

こうしてダメな男たちの物語は「対消滅」を起こして終わる。一方は唾棄すべきものとして、一方はかつて後見人であった素晴らしい人として。男たちの物語が終わった後に、女であるインシアの、人生という名の物語が始まる。それは一人の、何にも束縛されない個人の物語だ。かつて彼女は”秘密の”スーパースターだった。しかしこれからは、誰にも何にも臆することの無い、彼女自身の人生のスーパースターとして生きることだろう。


映画「シークレット・スーパースター」日本版予告編

PK ピーケイ [Blu-ray]

PK ピーケイ [Blu-ray]

 
きっと、うまくいく [Blu-ray]

きっと、うまくいく [Blu-ray]

 

『バジュランギおじさん』でサルマーン・カーン・ファンになった方の為のサルマーン・カーン出演作ガイド26作!

f:id:globalhead:20190130222255j:plain

現在公開中の大ヒット映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』、皆さんもうご覧になられたでしょうか。インドとパキスタンとの国境を越え、迷子の女の子を送り届けようと奮戦する一人の心優しい男の姿を描く素晴らしくハートウォーミングな作品なのでまだの方は是非ご覧になられてください。

そしてこの作品で主演のサルマーン・カーンの姿に惚れこみ、彼のファンになった方も大勢おられるかと思います。サルマーン・カーンは1988年の映画「Biwi Ho To Aisi」でデビュー以来100本近くのインド映画に主演・出演しておりますが、実は日本で一般公開された映画作品はほんの数作、DVDで視聴できるのは2、3本だけなんじゃないでしょうか。

しかしそんなサルマーン兄ィの映画をもっと知りたい!観てみたい!というサルマーン・カーン・ファンの皆さんのために、オレがこれまで観たサルマーン映画26作をここで紹介します。殆どの作品は輸入DVDで英語字幕で視聴したもの、ないしは日本のインド映画上映会でやはり英語字幕で視聴したものなんですが、「輸入DVDでも英語字幕でもいい!」という方のお役に立てればいいかと思い企画しました。

作品は主演・出演したものに限り、カメオ出演のある作品については省きました(例外在り)。また、参考として個人的な評価を5段階の星印で表示してみましたが、これはあくまで主観的なものだと思われてください。サルマーン兄ィ主演映画の中で26作というと4分の1程度ではありますが、彼のヒット作・話題作はほぼ押さえてあるのではないかと自負しております。また、並びの順番は公開順となっています。では行ってみよう!

■Andaz Apna Apna (監督:ラージクマール・サントーシー 1994年インド映画)★★★★

アーミル・カーンと共演したというデビュー間もない頃のサルマーン兄ィ作品はコテコテのナンセンス・コメディです。アホアホなサルマーン兄ィを是非ご覧あれ!それにしてもまだ20代のサルマーン兄ィ、若い!


■Hum Aapke Hain Koun…! (監督:スーラジ・バルジャーティヤ 1994年インド映画)

3時間以上ある上映時間の殆どが結婚式!?というとんでもない作品なんですが、これインドで大ヒットしてるんですよ。インド映画初心者にはちょっと濃すぎるかもしれませんが、あまりにディープなインド映画世界はクセになる部分を持っています。


■karan Arjun (監督:ラーケーシュ・ローシャン 1995年インド映画)

あのシャー・ルク・カーンとサルマーン兄ィが共演を果たした!というアクション作なんですが、これがもう、「トンデモ」と言っていいぐらい凄まじくハッチャケた物語で、そんなヤヴァさをとことん楽しみたい方には是非お勧めしたい!いや、おかしいからこの映画!


■Maine Pyar Kiya (監督:スーラジ・バルジャーティヤ 1989年インド映画)

お金持ちのボンボン息子が貧しい女性に恋をして、自らも労働者階級となり愛を伝えようとするラブロマンス作品です。コミカルさとシリアスさが同居した演出は観るべきものがあり、サルマーン兄ィの佳作作品として推したいですね。
■Khamoshi: The Musical (監督:サンジャイ・リーラー・バンサーリー 1996年インド映画) こちらもラブロマンス。聾唖夫婦の一人娘に恋をした主人公(サルマーン兄ィ)が彼女に求婚しますが、彼女は事故で昏睡状態になり……という物語。切なく美しい物語展開に魅せられると思いますよ。


■Kuch Kuch Hota Hai (監督:カラン・ジョハール 1998年インド映画)

こちらはシャー・ルク・カーン主演作で、サルマーン兄ィはシャールクの恋敵という役柄でちょっとしか出演は無いのですが、インド映画2大スターの共演シーンはやはり見所です。


■Hum Dil De Chuke Sanam (ミモラ 心のままに) (監督:サンジャイ・リーラー・バンサーリー 1999年インド映画)

ラブロマンス。「愛し合うカップルが親の決めた結婚相手の登場により引き離される」というインド映画お得意の三角関係を描いたものですが、サルマーン兄ィはとても清々しい青年役で主演しております。ヒロイン役のアイシュワリヤー・ラーイがまたいいんだこれが。


■Hum Tumhare Hain Sanam (監督:K.S.アドゥヤマン 2002年インド映画)

 シャールク&サルマーンの共演作、さらにヒロインがマードゥリー・ディークシトということで観てみたんですが、これがグジグジした単なるシスコン&ブラコンのお話で、相当退屈してしまいました……。


■No Entry (監督:アニーズ・バスミー 2005年インド映画)

この時代のインド映画らしいくどくてしつこくややこしいコテコテのコメディ作品。実はサルマーン兄ィは中盤からしか出演せず、主演映画を期待すると肩透かしを食わされます。


■Saawariya (監督:サンジャイ・リーラー・バンサーリー 2007年インド映画)

こちらもサルマーン兄ィは「ヒロインが昔恋していた男」というチョイ役でしかなく、映画自体も美術に凝り過ぎて物語が謎な作品ではありますが、でもあんまり嫌いになれない作品でもあります。

 

■Partner (監督:ダヴィッド・ダーワン 2007年インド映画)★★

サルマーン兄ィが「恋の伝道師」という胡散臭いキャラで主演するコテコテのコメディ作品。この作品、共演のゴーヴィンダー演じる男が最高にクセの強いキャラで、彼とサルマーン兄ィとの掛け合いがほとんど漫才状態で楽しかった。意外とこの時代のサルマーン兄ィはコメディ作が多かったですね。

 

■Wanted (監督:プラブデーヴァ 2009年インド映画)

サルマーン兄ィがいよいよアクション映画に台頭してきた記念すべき作品ですが、同時にコメディ要素とラブロマンス要素も加味されています。ただし今観ると地味で古臭いかもしれないなあ。


■ダバング 大胆不敵 (監督:アビナウ・シン・カシュヤップ 2010年インド映画)

そう、これがサルマーン兄ィを一躍インドのスターダムにのし上げた超ヒット作であり超話題作『ダバング 大胆不敵』です。この映画に惚れこんだ方が経験が無いにも関わらずこの映画をインドから買い付け日本上映に漕ぎ着けたという経緯もあるほど強烈な魅力とブルータリティを兼ね備えた病みつき度120%のアクション作品なんですよ。 なにしろ主人公チュルブル・パンデーの漫画チックなアイコンの在り方がとんでもなく魅力的。今観ると多少時代を感じさせる部分もあるかとは思いますが、サルマーン・ファンにとっては必ず観るべき作品の一つと言えるでしょう。

f:id:globalhead:20190202132256j:plain


■Ready (監督:アニース・バーズミー 2011年インド映画)

 サルマーン兄ィがひたすら腰が軽く口の達者なお兄ちゃんを演じるラブコメディ。会話主体の笑いなので英語字幕だと苦労しましたが、ムンバイのみならずバンコクスリランカも舞台にしたロケーションが解放感を感じさせてくれます。


■Bodyguard (監督:シッディーク 2011年インド映画)

ボディガード」というタイトルからどんだけタフでシリアスな物語が!?と思ったらこれもラブコメ作品。サルマーン兄ィの役どころは惚れた女性から携帯電話で翻弄されるボディーガード役です。『バジュランギおじさん』にも出演したカリーナ・カプールがヒロイン役で登場します。


■Dabangg 2 (監督:アルバーズ・カーン 2012年インド映画)

インドでは社会現象になるほど大ヒットした『ダバング 大胆不敵』の続編です。 前作よりもお気楽で前作よりも強力になったチョルブルさんがまたまた暴れまわります。目新しい部分はないにせよ、これはこれで楽しめる作品です。それにしても現在3作目のアナウンスがあるみたいなんですが、本当に製作されるんでしょうか!?


■タイガー 伝説のスパイ (監督:カビール・カーン 2012年インド映画)伝説のスパイが登場する超絶アクションだ!と期待して観ると前半のゆる~いラブコメ展開にズッコケそうになりますが、この脱線ぶりがまた楽しい作品でもあります。後半は恋と任務の板挟みになった主人公タイガーの熾烈な戦い(とメロメロなロマンス展開)が盛り上がってゆきます。


■Kick (監督:サージド・ナディアードワーラー 2014年インド映画)『ダバング 大胆不敵』でアクション映画スターとなったサルマーン兄ィの大金をつぎ込んで製作されたと思われるアクション大作です。全体的にゴージャス感満載でアクションテンコ盛りの観ていて飽きさせない作りですが、主人公の造形が今一つ曖昧で「こいつ結局ナニしたかったの?」と思わされない事もないです。


■Jai Ho (監督:ソーヘル・カーン 2014年インド映画)

『ダバング 大胆不敵』で国民的大スターになったサルマーン兄ィが「アクションスターなだけでなく人格者にも見られたい」と思ったのかどうか、「強面男」と「善意の人」の両方のキャラを持つ男を演じて結局どっちつかずだったという、これは失敗作だったと思うなあ。


■プレーム兄貴、お城へ行く(Prem Ratan Dhan Payo) (監督:スーラジ・バルジャーティヤ 2015年インド映画)インド貴族とそっくりさんな平民の男が大事件に巻き込まれる!というサルマーン兄ィが一人二役で登場の大ヒット映画です。この作品は『バジュランギおじさん』の後に公開されたのですが、『バジュランギおじさん』でそれまでの『ダバング』路線を見事払拭したサルマーン兄ィが水を得た魚のように伸び伸びとした演技を見せるようになってきた、まさに円熟のサルマーン兄ィが見られる最高に素晴らしい作品しょう。作品的にも古き善きインド映画の在り方を堂々と見せつけた大作であり、『バジュランギおじさん』でサルマーン兄ィのファンになった方に次に観て欲しい作品、というならまずこの作品を勧めたいぐらいですね。

f:id:globalhead:20190202140756j:plain


■HERO (監督:ニキル・アードヴァーニー 2015年インド映画)

この作品ではサルマーン兄ィは製作のみで出演はしていません。してはいませんが、なんと!最後のほうで主題歌を歌うサルマーン兄ィの録音風景が出てきて「兄ィ、なにやってますねん!?」と大いにツッコミ入れたくなること必至です!


■Sultan(監督:アリー・アッバース・ザファル 2016年インド映画)

 一人のレスラーの愛と栄光を描く感動スポ根映画です。魅せるストーリー、魅力あるキャラクター、テンポの速い構成と演出、まさに非の打ち所の無い娯楽映画の王道を行く傑作映画でしょう。さらにレスラー役のサルマーン兄ィのムキムキボディがこれでもかと見られるんですからこれはヨダレもの!『プレーム兄貴、お城へ行く』と併せてサルマーン・カーンを気に入った方にはこれも是非ご覧になって欲しい作品です。そしてなんとこの作品、一般流通はしていないものの、日本語字幕付きDVDが通販で買えるんです!決して期待を裏切らない名作なのでこの機会にどうぞ。(購入はこちら↓)

f:id:globalhead:20190202143542j:plain


■メイキング・オブ「プレーム兄貴、お城へ行く」[原題:That's What It's All About: The Journey of Prem Ratan Dhan Payo] (監督:ヴィディ・カースリーワール 2016年インド映画)

タイトル通り映画『プレーム兄貴、お城へ行く』の製作ドキュメンタリーです。映画作品という訳ではないので星印はつけないことにしました。


■Tubelight (監督:カビール・カーン 2017年インド映画) 『バジュランギおじさん』監督のカビール・カーンが、サルマーン兄ィを主演にまたもやインド・パキスタン紛争にまつわる物語を作り上げたのがこれです。ここでもサルマーン兄ィはちょっと頭のヨワイ男を演じており、二番煎じという評価も多いのですが、作品としてそんなに悪くなく、これはこれで好きな作品です。


Tiger Zinda Hai (監督:アリー・アッバース・ザファル 2017年インド映画)

『タイガー伝説のスパイ』の続編であり、アクションスターのサルマーン兄ィが帰って来た!というアクション大作です。これがもう徹底的にド派手にドンパチを繰り広げており、全編見どころ満載の爽快作となっております。『バジュランギおじさん』の善意たっぷりなサルマーン兄ィだけではない、強面でひたすら男臭くカッコイイサルマーン兄ィをとことん堪能してください!最近の作品では『プレーム兄貴、お城へ行く』『Sultan』と並んでお勧めしたい作品だと言えるでしょう。

f:id:globalhead:20190202145001j:plain


■Race 3 (監督:レモ・デスーザ 2018年 インド映画)アクション映画。「3」とナンバリングが付いていますが、サルマーン兄ィはシリーズ初出演。作品の作りは派手なんですが、力み過ぎたのかどうにもちぐはぐな印象の物語で、これは失敗作でしたねえ。

 

◎まとめ

というわけで最近サルマーン・カーン・ファンになった方の為のガイドを書いてみましたが、最近の作品でお勧めになるのが『プレーム兄貴、お城へ行く』『Sultan』『Tiger Zinda Hai』といったあたりになるでしょうか。あ、『ダバング 大胆不敵』はお勧めも何も必須科目ですので必ず観ましょう!

古いインド映画作品はインド映画ファン以外には敷居が高いと思いますが、それでも果敢に挑戦したい!と意欲を燃やすチャレンジャーの方には『Andaz Apna Apna』『Hum Aapke Hain Koun…!』『karan Arjun』『Hum Dil De Chuke Sanam (ミモラ 心のままに) 』あたりをお勧めしましょうか。そしてついでにインド映画沼にずるずると足を取られてしまってください!その後の人生には責任を持ちません!

f:id:globalhead:20190131081452j:plain

悪逆非道の東インド会社に立ち向かえ!/映画『Thugs of Hindostan』

■Thugs of Hindostan (監督:ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ 2018年インド映画)

f:id:globalhead:20190126195314j:plain

■悪逆非道の東インド会社に立ち向かえ!

「インドの民よ!暴虐極まる東インド会社に立ち向かえ!」とばかりに憂国の志士たちが戦いを繰り広げる歴史エンターティンメント大作『Thugs of Hindostan』です。

この作品、配役がなにしろ豪華で、『家族の四季 愛すれど遠く離れて』『華麗なるギャッツビー』でも知られるインド映画の大スター・アミターブ・バッチャン、『きっと、うまくいく』『PK』『ダンガル』のアーミル・カーン、『命ある限り』『チェイス!』のカトリーナ・カイフ、『ダンガル』のファーティマ―・サナー・シャイフが出演、監督が『チェイス!』のヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ、制作費はインド映画史上2番目となる31億円の巨費を費やして製作されたという話題たっぷりの作品なんですね(ちなみに制作費1位はシャンカール監督『2.0』の51億円)。

《物語》18世紀末、インドは東インド会社の暴虐に喘いでいた。ミラ王国の王と王妃は東インド会社の武官クライブ(ロイド・オーウェン)の陰謀により殺害され、その娘ザフィーラー(ファーティマー・サナー・シャイフ)は忠臣アーザード(アミターブ・バッチャン)の助けによりからくも生き残る。数年後、強奪団を組織したアーザードとザフィーラーは東インド会社を相手に略奪を繰り返し、彼らを悩ますようになる。脅威を感じたクライブはコソ泥のフィランギー(アーミル・カーン)を雇い、アーザードの組織に潜入させる。しかしフィランギーはアーザードの変革への想いに次第に心を動かしてゆくのだった。

■『Thugs of Hindostan』の4人の主要キャラクターを大紹介!

さてこの『Thugs of Hindostan』、歴史スペクタクルというコスチューム・プレイ作品なので、キャラクターのビジュアルをご覧になってもらったほうが魅力が伝わるかと思いますので、ここで主演の4人を紹介してみます。

◆二刀流の剣豪・忠臣アーザード(アミターブ・バッチャン

f:id:globalhead:20190203114242j:plain

インドでは「ビッグ・B」として知られるアミターブ・バッチャン、さすが数々のインド映画大ヒット作に出演してきただけあって貫禄充分、奪われた王国のただ一人の生き残りである王女を守るため、忠義を尽くしまくる老爺を演じ、すわ戦いともなると二振りの刀を翻してちぎっては投げちぎっては投げの大立ち回り、圧倒的な強さを見せ付けてくれます!その姿は『バーフバリ』の忠臣カッタッパをも髣髴させます!

◆敵か味方か?謎のコソ泥・フィランギー(アーミル・カーン

f:id:globalhead:20190203115852j:plain

なんですか誰ですかこの怪しさ百万倍アピールの妙な男は!?実はなんとこの人、『きっと、うまくいく』のアーミル・カーンなんですよ。『チェイス!』のムキムキマンや『ダンガル』のでっぷり太ったお父さん役などを見ると判るように、常に役柄に合わせてカメレオンのように変身する俳優さんだったんですね。まるで往時のロバート・デ・ニーロを思わせますが、このビジュアルだと『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョニー・デップ的な胡散臭さを漂わせていますね。物語でも「敵か味方か?」というどっち付かずの立場の男を演じ、とことん怪しくヘロヘロと立ち回っています!

◆復讐に燃える悲劇の王女・ザフィーラー(ファーティマー・サナー・シャイフ)

f:id:globalhead:20190203120831j:plain

1997年から活動している若手女優さんなんですが、映画『ダンガル』で女子レスリング選手として戦う長女ギーター役だった方、と言ったら判るかもしれません。この『Thugs of Hindostan』では父母を殺され王国を奪われた悲劇の王女を果敢に演じ、復讐に燃える目で東インド会社の雑魚どもをばったばったと倒してゆく頼もしさを見せ付けてくれます!ちなみにメイン・ウェポンは弓矢、なんと『バーフバリ』も真っ青の3本一気射出の技も繰り出して、その強力さはその辺のヘナチョコ男の比ではありません!

◆心優しき華麗なる踊り子・スライヤー(カトリーナ・カイフ

f:id:globalhead:20190203123628j:plain

インチキ野郎フィランギーの影となり日なたとなり、「全くしょうがないわねえこの宿六は」と何かと世話を焼く美人ダンサー・スライヤー、彼女を演じるのがそのゴージャスさで人気を誇るインド女優・カトリーナ・カイフとなります。正直この作品ではそれほど活躍する場所が与えられず、「なんで出てきたの?」と思わせてしまいます。しかしひとたびダンス・シーンともなる圧倒的なパフォーマンスを披露し、物語においても要所要所で存在感をアピールしますが、これはひとえにカトリーナの底力あってのことでしょう。もっと物語に大きなかかわりを持つシーンが観たかったなあ!

■娯楽に徹し安心して観られる歴史エンターティンメント 

さてこの『Thugs of Hindostan』、「大スターたちの共演」「派手な歴史エンターティンメント作」「敵は東インド会社」「虐げられたインド民の復讐」「ばらばらだった仲間たちの団結」と、非常に見所のポイントを押さえて製作された作品であると言う事ができます。そしてこの作品、「4人の主要キャラクター」でもちらっと触れましたが、どこか『バーフバリ』の大ヒットに対抗心を燃やして作られた作品のようにも思えるんですね。

巨額の費用を掛け、派手なアクションで空前の大ヒットを飛ばした『チェイス!』の監督ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤを採用し、あたかも『バーフバリ』の向こうを張った歴史大作に仕上げようとしたようなこの『Thugs of Hindostan』、確かにアクションは充分に楽しめ、次から次に巻き起こる戦いと危機一髪の様子は観ていて決して飽きさせません。そういった部分で御代分きっちり回収できる娯楽作であり、安心して観ていられるのですが、物語の深み、といった点ではいま一つの部分があります。

忠臣アーザードの質実剛健振りは言うこと無しなんですが、「敵か味方か?」なフィランギーに関しては、なにしろアーミルだし結局アーザードの仲間になるんだろ?とすぐ思えてしまいサスペンスに繋がりません。ザフィーラーもタフな女キャラで押し通すのかな、と思わせながらフィランギーとロマンスがあるの?ないの?なんなの?という曖昧な描写。スライヤーに関しては物語に上手く居場所を見つけることに苦労していて、「とりあえずここ、出しときます!」とでもいうようなぞんざいな扱い。敵との戦いにおいても「え、なんでそこで敵逃がしちゃうの?」といったスッキリしないシーンがあったり、なんかこーシナリオの練り込み不足が随所に見られるんですね。

そんな部分で、アクションばっちり!視覚効果ばっちり!スターの魅力たっぷり!派手さも抜群!であるのと同時に、心にズシッとくるドラマ性は感じない!というとても惜しいし勿体無い作品です。まあハリウッド映画ならそんな作品ゴマンとあるけどね!決して悪い作品ではないので、観ようかどうか迷われている方には是非観て欲しいし、観て損は無い作品だと思うんですけどね。そういった意味では気楽に観られるライトな楽しみ方を求めると吉でしょう。

なんでも本国では予想よりもヒットしなかったので中国上映版ではアーミルが主役であるような(中国では『ダンガル』が空前のヒットを飛ばし人気俳優となっている)大幅な短縮と編集を施したバージョンが上映されたようなんですが、そっちのバージョンはどんななんだろうなあ。

 

きっと、うまくいく [Blu-ray]

きっと、うまくいく [Blu-ray]

 
PK ピーケイ [DVD]

PK ピーケイ [DVD]

 
命ある限り [DVD]

命ある限り [DVD]

 

『女神は二度微笑む』のシリーズ作『ドゥルガー~女神の闘い~』を観た

ドゥルガー~女神の闘い~(原題:Kahaani 2)(監督:スジョーイ・ゴーシュ 2016年インド映画)

f:id:globalhead:20181230083222j:plain

 インド映画スリラー『女神は二度微笑む』の続編とかシリーズ作とかいうことになっている『ドゥルガー~女神の闘い~』を観てきました。この映画、去年夏の「インディアン・シネマ・ウィーク2018(ICW2018)」の1作品として公開されていたんですが、見逃してしまい暮れの「ICW2018リターンズ」でやっと観る事が出来ました。

それにしても1作目の『女神は二度微笑む』を最初観た時はホントぶったまげましたね。「インド映画にここまで周到にトリックが用意されたサスペンスがあったのか!」と思っちゃったんですよ。意外とそれまでのインド映画ってガチなサスペンスに弱い部分があったものですから。この映画からじゃないかなあ、インド映画で結構キッチリしたサスペンスが作られ出したのは。

さてこの『ドゥルガー~女神の闘い~』、原題『Kahaani 2』となっているように、『女神は二度微笑む(原題:Kahaani)』の続編ぽいタイトルなんですね。監督も主演も一緒で、同じようなサスペンス・スリラー・ジャンルなんですが、実際は続編ではなく同様モチーフの”シリーズ作”というのが順当のようです(でも『女神は二度微笑む』主人公のその後とか観たかったなあ)。

《物語》西ベンガルに住むヴィドヤーと少女ミニー。ある日ミニーが誘拐され、救出に向かったヴィドヤーが交通事故に遭った。事故を担当した警部補のインデルは、彼女が前妻のドゥルガーで、指名手配犯であることを知る。なぜミニーは誘拐され、ドゥルガーは指名手配されたのか。そして二人の過去は・・・。

ドゥルガー~女神の闘い~(原題:KAHAANI 2) – ICW Japan 2018より

物語は交通事故に遭い昏睡状態のヴィドヤー(ヴィディヤー・バーラン)と事件の真相を追う警官インデルジート(アルジュン・ラームパール)の行動を追う現在に、インデルジートが見つけたヴィドヤーの日記から明かされる彼女の数奇な過去がフラッシュバックされながら進行してゆきます。ここで明らかにされるのはヴィドヤーの二重三重に秘密にされた過去だったんですね。

さてこの作品を観るにあたって期待するのは1作目『女神は二度微笑む』のような「周到に用意されたトリック」が同様に用意されるのか?ということですね。ちょいネタバレしますが『女神は二度微笑む』がいわゆる「信用できない語り手」という推理ドラマ手法を使っていたように、この作品でもその手法が使われているのか?というのずっと気にしながら観てしまいましたね。

そんななので、物語で表面的に提示される様々な”事実”が、本当に”事実”なのか?どこかに”嘘”や”捏造”や”一端しか明かされていないが故に事実とは言い難い事実”が混入してるのではないか?とずっと疑いながら観ていたんですよ。この辺りの「推理勝負」は観ていて楽しかったですね。原題の「Kahaani」とは単純には「物語」という意味ですが、これは「映画という物語」ということではなくて、このシリーズにおいては「事実の中に意図的に混入させられた虚実(=騙り、フィクション)」という意味合いだと思うんですよ。『ドゥルガー~女神の闘い~』は『女神は二度微笑む』と物語的連続性はありませんが、この「事実の中に意図的に混入させられた虚実」という部分において連続性を感じさせられましたね。

とは言え、観ているオレが裏読みし過ぎたのか、意外とその「虚実」の在り方は描かれたまんま、というか特にひねりがあったりするものではなく、オレは最後の最後まで「いやこれは本当のラストじゃない!絶対とんでもない大どんでん返しがやってくる!」とワクワクしながら観ていたにもかかわらず、想定内のどんでん返しで一件落着してしまったもんですから少々食い足りなかったかなあ。そこホント、もう一ひねりして、観客を呆然自失させるクライマックスを用意してよ!と思ってしまいましたよ。とはいえそれも『女神は二度微笑む』があまりにもよく出来ていたスリラーだったというせいもあり、この作品単体で言うなら及第点のスリラーだったのではないでしょうか。 

女神は二度微笑む [DVD]

女神は二度微笑む [DVD]

 

俺の恋人(マブ)を泣かせた奴には鉄拳と銃弾の雨をお見舞いするぜ/映画『タイガー・バレット』

■タイガー・バレット (監督:アフメド・カーン 2018年インド映画)

f:id:globalhead:20190116164553j:plain

タイガー・バレット!
奴はインドのランボー!特殊部隊の最終兵器!
タイガー・バレット!
シックスパックの憎いヤツ!笑ってない目が相当コワイ!
タイガー・バレット!
俺の恋人(マブ)を泣かせた奴にゃあ鉄拳と銃弾の雨をお見舞いするぜ!

■ムッキムキのシックスパック野郎タイガー・シュロフ最新作!

2018年にインドで公開され大ヒットを飛ばしたアクション映画、『タイガー・バレット』でございます。主演俳優の名はタイガー・シュロフ、1990年生まれの28歳!2014年のデビュー以来、鍛え上げられた肉体と研ぎ澄まされた格闘技の技で今やボリウッド界隈をブイブイ言わせている男です!おまけにダンスを踊らせりゃあパッキパキに切れ味鋭いステップを見せつける!ただし爬虫類系の死んだ目をしているのがちょっとコワイ!そしてこのタイガー君、2020年公開予定の『ランボー』ハリウッド・リメイクに出演という噂が上っている!!なんてってタイガー君、こんななんですよ!?キャアァ凄い!

f:id:globalhead:20190117222435j:plain

そんな大注目なタイガー君の主演第5作目がこの『タイガー・バレット』という訳なんですな。原題は『Baaghi2』、タイガー君の主演第2作目『Baaghi』の続編的なタイトルですが、内容は実は全然関係ありません。しかーし!「ムッキムキのタイガー君がモリモリの筋肉を駆使して悪い奴らを地獄の底まで叩き落す」という点では一緒です!あと「三白眼の瞳が爬虫類っぽくてコワイ」という部分も!

■『タイガー・バレット』はこんな物語だ!

さて『タイガー・バレット』のお話はこんな感じ:

陸軍特殊部隊で今日も御自慢の筋肉を鍛えることに余念がないタイガー君の所に2年前別れた元恋人ネーハー(ディシャ・パタニ)から連絡が入ります。彼女は既に人の妻となっている身ですが、愛する娘が誘拐され、にもかかわらず夫も警察が取り合ってくれない、というのです。もはや頼りになるのはあなただけ……。すわ一大事とネーハーの元へ急行したタイガー君ですが、しかし調査の中で分かったのは、彼女には子供などおらず、当然誘拐事件など起こっていない、という周囲の証言だったのです。

この前半ではあたかもリーアム・ニーソン主演映画『アンノウン』の如く記憶と現実とが違うというミステリーが描かれて行きます。果たしてネーハーは嘘をついているのか?それならなぜ?それとも彼女はなんらかの精神障害なのか?いったいネーハーに何が起こったというのか?疑心暗鬼のまま遂にはネーハーを疑い始めるロニーだったが……というもの。

とまあ謎が謎を呼ぶ展開を見せる前半ですが、実は決して緊迫のミステリ!というわけでもなく、「彼女の身に一体何が!?」と思い切りサスペンスが盛り上がった瞬間突然インド映画名物の歌と踊りが賑々しく始まり、主演の二人が艶やかな表情でステップ踏みまくったり、回想シーンとして学生時代のロニーとネーハーの出会いがキャッキャウフフとかまびすしく語られ、「今時アイドル主演映画だってここまでお花畑に描いたりしねえよ!」と視聴中の皆様を若干イラッとさせる事必至でありましょう!いやしかしそこがいいんです!インド映画だからなんでもアリなんですよ!

ところでタイガー君の話ばかり書きましたが、この作品、ヒロイン役のディシャ・パタニがひたすら美しい!実は彼女、ジャッキー・チェン主演の『カンフー・ヨガ』(2017)にも出演しており、インターナショナルな知名度もこれから上がってゆくのではないでしょうか!

f:id:globalhead:20190117221934j:plain

■風雲急を告げ怒涛の展開を見せる後半!

そして後半、色々大変な事態へと発展したこの事件に遂に怒髪天を衝いたタイガー君はマグマを吹き出す噴火山の如く憤怒を爆発させ、警察と軍隊を敵に回して土石流を思わす鉄拳の応酬と、火砕流もかくやという銃弾の雨を降らせるのであります!もはやヤツを止めることは誰もできない!いったれタイガー!いてこましたれやタイガー!奴らをギタギタにしなはれ!

そんな阿修羅の如きインドの鬼神と化したタイガー君が大暴れする様子を描いたポスターがあるので是非ご覧ください!

f:id:globalhead:20190117214005j:plain

おおおお!まるでラジニカーント主演のインド映画『ロボット』を彷彿させるマシンガン千手観音状態!(てかいったいどうなってんだ)

まあ正直なところ「なんでお話がここまでド派手な方向へと転がらなきゃならないんだ……」と観終った後に思いましたが、観ている間はゲハゲハ笑いながら楽しんでいたので善しと致しましょう!というか、タイガー君が『ランボー』でハリウッド・デビューする御祝儀として、「その前にこっちでインド版『ランボー』作っちまおうぜ!」というつもりだったんじゃないかと思います。だいたい本家『ランボー』みたいに「大佐の人」が出てきて「ヤツは森の中では一騎当千」とかなんとか言ったりしてたぐらいだし!

そんな訳で物語的整合感は果てしなく乏しいのですが(そもそも「娘誘拐」の根拠がまるで理解不能)、とりあえず鉄拳繰り出す格闘技の技と銃撃戦の弾丸の数でお腹いっぱいになれる、愉快痛快天網恢恢疎にして漏らさぬ娯楽アクションとして十二分に満足できる作品だったと言えるでありましょう!そして!この作品、ランボーみたくシリーズ化されるらしく、原題『Baaghi3』はリメイク版『ランボー』と同じ2020年公開予定とか!おおおう!ってことは来年はタイガー・シュロフ祭りの年ってことじゃないかよ!?東京オリンピックなんてどうでもいいから、早くタイガー祭りに参加させてくれい!!

タイガー・バレット [DVD]

タイガー・バレット [DVD]

 
タイガー・バレット(字幕版)
 
■参考:タイガー・シュロフ主演作一覧